★「やる気が出ない」の意外な原因とは
先日、東京に出張した際にコーチングをしたんですが、
クライアントのTさんがかなり深いコーチングになったんです。
そこで、詳細を伏せた上でTさんとのコーチングの中身を
少しだけご紹介しようかと思います。
参考になる要素があれば、使ってみてください。
さて、Tさんに「最近はどうですか?」と尋ねると、
「ぶっちゃけ、ぜんぜんやる気が出ないです」と言うんです。
まあ、人間ですから、誰でもやる気の出ないときはありますよね。
なので、他愛のない話をしながら近況を聞いてたんですが、
どうも聞いていると、単純な気力の低下ではなさそうに思えたんですね。
なので、あれこれと深掘りしてみました。
「やらなきゃいけないことはあるので、淡々とやってるんです。
だけど、協業先や顧客とのやりとりがスムーズではなくて…」
「○○のように言われてしまうと、どうなのかなー、って思います」
「××は進めておくべきなので、なんとかしようと思ってます」
Tさんに質問して、いろいろな角度から話を聞くんですが、
返ってくる答えはちょっと要領を得ないというか、
「わかるようでわからない」返答が多いんですね。
結局どう思ってるんだろう?
つまりどうしたいんだろう?
ということが、ぼやけていてよくわからない。
なので、ちょっと踏み込んで聞いてみました。
「あのー、さっきから『〜べき』とか『〜方がいい』とか
思考の答えはよく答えてくれてるんですけど、
『〜したい』とか『〜がムカつく』とか
感情が全然出てきてないんです。
もしかして、あまり感情的にならないように抑えてます?」
「あー… そうかもしれないですね。
特にネガティブな感情とかは、出さない方がいいじゃないですか」
「ん? なんで?
なんでネガティブな感情は出さない方がいいんですか?
私はそっちのプロなんですけど…」
「ええ、それはわかってます。
だけど、私がネガティブな感情を出しちゃって、
悪影響を与えたら良くないので」
「私はプロなので、ちょっとネガティブな感情が出てきたくらいで
影響をもらっちゃうようなことはないですよ。
それ、知ってますよね?」
「ええ、知ってます。だけど、なんか抑えちゃうんですよね」
Tさんは
「自分の怒りや不満をぶちまけることで、相手に悪い影響を与えたくない」
という考えがあって、自分の感情を抑え込んでいたんです。
Tさんとはそれなりに長いお付き合いなので、
私の技量も、悪い影響を受けないことも知っています。
でも、無意識に怒りを出さないようにしていました。
ここに重要なポイントがある!
と思った私は、もう少し踏み込んでみました。
「怒りや不満で悪い影響を与えることで、何を怖れてるんですか?」
「・・・
私が以前、心を病んでいて、人生を無駄にしたと思ってるんです。
それを、他の人にも味わわせるようなことはしたくないです」
簡単に言うと、「人を傷つけたくない」という気持ちですかね。
自分の怒りや不満のせいで相手の心を傷つけたくないと思って
それを出さずに、感じないようにしていたのです。
怒りや不満、悲しみなどのネガティブな感情を感じないようにすると、
喜びや楽しみ、やる気などの前向きな感情も感じなくなります。
「ネガティブだけを感じない」という都合のいいことは
私たちにはできないようになっています。
だから、Tさんは仕事をしてもやる気を感じなかったんです。
「物理的に殴ったり蹴ったりするのと違って、
心は他人が傷つけることはできません。
他人の言動をきっかけに、本人が自分で自分を傷つけているんです」
「うーん、それはわかるんですけど、やっぱり私のせいで傷つけてしまったら
良くないと思うので…」
「頭ではわかりますよね。
では、どうしてTさんの心がそれを受け付けないんでしょう?」
「・・・」
「あ! わかった・・・!」
私の問いにじっと考えた後、一つの答えに至ったTさん。
「私が父親のせいで心を病んでしまって、
そのせいで人生を無駄にしてしまって、
それがなければもっといろんなことができたのに…」
「これって、思いっきり他責にしてますね。
もしかして、父親のせいにするのをやめないといけないんですかね?」
Tさんは子供の頃に、(何があったのかは知らないけど)
父親との関わりの中で傷ついて、心を病んでしまったようです。
この経験があるために、
「誰かのせいで心を傷つけ、病んでしまうことがある」
という考えがTさんの中に根強く残っていたんです。
Tさんは「父親のせいにするのをやめる」ことで
「人が他人の心を傷つける」という考えを変える必要がある、という
答えに至ったようでした。
「なるほど。小さい頃、お父様のせいで傷ついてしまった。
そう思ってると、他人のせいで心が傷つくという考えになりますね」
「そうですね。これをやめないと、誰かを傷つけるのが怖くて
自分の感情を感じられないし表にも出せませんね」
それからじっと、Tさんは黙って自問自答をしているようでした。
「わかりました。もう父親のせいにするのはやめます。
あのとき私は、父親にされたことで傷ついたと思ってましたが、
『自分が父親の言葉を受け入れて傷つくことを選んだ』んですね」
なんだか禅問答みたいな難しい話になってきましたが、
簡単に言うと「昔のことを父親のせいにするのをやめた」ということですね。
これを決めた途端、Tさんの表情がガラッと変わって、
「あー、なんか、自分の感情をもっと出していいような気がしてきました。
嫌なことや嫌って言うし、ムカつくときはムカついていいんだ!」
「まあ、ムカつくからって暴言を吐くとかはしませんし、
大人なので言い方は工夫しますけど、
自分を殺して抑え込む必要って、ないですね」
と、清々した表情で言いました。
「いいですね。ところで、仕事のやる気はどうなりましたか?」
「あ! なんか、自然にやる気になってる気がします」
と、最初の課題である「仕事のやる気」も解決しているのを確認して
その日の面談は終了となりました。
今回、Tさんが自分で勝手に解決しちゃったな〜(笑)
Tさんのように、単純に「やる気が出ない」というだけのときにも
その裏にトラウマ級の心の傷やネガティブな思いが眠っていて
深掘りするとすごいのを引き当てることがあります。
今回は、
「自分が父親のせいで傷ついた」
→「他の人も同じように、他人のせいで傷つくことがある」
→「自分が傷つける可能性も否定できない」
→「傷つけないように、感情を抑え込む」
という図式だったのを、
「自分は父親のせいではなく、自分で傷つくことを選んだ」
→「人の心は他人が傷つけることはできず、自分で傷つくことを選ぶ」
→「自分が傷つけることはない」
→「安心して、自分の感情を感じ、表現する」
というふうに、考え方を変えた例でした。
人の心というのは繊細で、複雑で、
単純化できないものなんだなと思い知った面談でした。
AIが本当の意味で深いコーチングをできるようになるのは
もう少し先のことかな、と思います。
Tさんが今後どうなるか、楽しみにしつつ、
次回の面談で経過を聞いてみたいと思います(´▽`)
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