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【経営者の深層心理】なぜ彼は、成功したのに酒に溺れたのか?ある社長の告白

この記事のポイント

  • 「お酒がやめられない」といった問題行動の裏には、それを引き起こす「感情」や「ストレス」が隠されています。
  • そして、そのストレスのさらに奥深くには、「~でなければ自分には価値がない」といった、無意識の「思い込み(ビリーフ)」が存在します。
  • 表面的な行動(禁酒)を無理に変えようとしても、この根本的な思い込みを書き換えない限り、問題は決して解決しません。
  • 一見無関係に見える「尊敬されなければ価値がない」という思い込みが、経営者を過剰な緊張状態に追い込み、アルコールへの依存行動に繋がっていました。

「事業は成功した。でも、酒がやめられない」ある経営者の告白

少し前にコーチングをさせていただいた、中山さん(仮名)の事例をご紹介します。数百名の社員を抱える企業の社長である中山さんは、画面越しにも伝わってくるほどの、まさに「やり手経営者」といったオーラをまとっていました。

事業は成功し、誰から見ても順風満帆。しかし、彼が私にコーチングを依頼してきた理由は、意外なものでした。

「どうしても、お酒がやめられないんです」

健康や仕事の生産性を考えれば、飲むべきではないと頭では分かっている。しかし、夜、家に帰ると、無意識にチューハイを手に取り、気を失うまで飲み続けてしまう。気づけば、ソファで朝を迎えている…。そんな毎日を繰り返している、と彼は語りました。

【コーチング事例】「見えないストレス」の正体を暴く4つのステップ

一般的なアプローチであれば、「アルコール依存症」として治療の対象になるかもしれません。しかし、私たちコーチングでは、「お酒」という行動そのものではなく、「その人にお酒を飲ませている、本当の原因は何か?」という、心の深層に焦点を当てていきます。

ステップ①:行動の裏にある「感情」を探る

私:「中山さんは、どうしてお酒を飲むのだと思いますか?」
中山さん:「習慣ですね。飲まないと落ち着かないんです」
私:「飲むと、どんな気持ちになりますか?」
中山さん:「嫌なことを忘れて、リラックスできる感じです。仕事のストレスが、かなりありますから」

最初の対話で、飲酒の目的が「仕事のストレス解消」であることが見えてきました。もし、ここで無理に禁酒をすれば、どうなるでしょうか。ストレスの逃げ場がなくなり、心身を病むか、別の依存行動に走るか、いずれにせよ良い結果にはなりません。アプローチすべきは「お酒」ではなく、「仕事のストレス」です。

ステップ②:ストレスの源泉「社員にナメられてはいけない」

私:「仕事のどんなところに、ストレスを感じるのですか?」
中山さん:「色々ですよ。社員は私の方針にすぐには従わないし、重箱の隅をつつくようなことを言う者もいる。常に気を張って、スキを見せないようにしないと、ナメられてしまいますから」
私:「常に気を張っていたら、疲れてしまいますよね。もう少し、肩の力を抜いてみてはいかがですか?」
中山さん:「経営者がそんな砕けた態度では、社員はついてきません。私が模範でなければならないんです」

彼の強い責任感が、彼自身を常に緊張状態に追い込み、それがストレスになっている。そして、その緊張を解きほぐす唯一の方法が、お酒だったのです。

ステップ③:核心に迫る質問「ナメられたら、どうなる?」

彼の話を聞き、私は一つの核心的な質問を投げかけました。

「中山さん、仮に、社員にナメられたとしたら、一体どうなるのでしょうか?」

この問いに、彼は最初、「会社が回らなくなる」「規律が守られなくなる」と、経営者としての“正論”を答えました。しかし、私はさらに深く、彼の本心を探りました。

私:「世の中には、もっと社員とフレンドリーな社長もいますよね。それでもうまく経営している事例はたくさんあります。会社が回らない、という以上に、中山さんご自身にとって、何か不都合なことがあるような気がするのですが…」

この問いに、彼はしばらく沈黙した後、ついに本当の気持ちを口にしたのです。

ステップ④:ついに見えた根本原因「尊敬されなければ、価値がない」

中山さん:「…そうでないと、社長としての存在意義というか、存在価値というか…そういうものが、ないじゃないですか」

これでした。中山さんを長年縛り付けてきた、ストレスの本当の根源。それは、

「自分は、社員から尊敬されるような完璧な人物でないと、存在価値がなくなってしまう」

という、彼自身の、無意識の「思い込み(ビリーフ)」だったのです。存在価値がない、と感じることは、人間にとって耐え難い恐怖です。だからこそ、彼は常に気を張り、必死で「尊敬される社長」を演じ続けていた。そして、その重圧から解放されるために、毎晩お酒に逃げるしかなかったのです。

解決策は「やめる」ことではない。「書き換える」こと

根本原因さえ見つかれば、あとは難しくありません。その「尊敬されなければ価値がない」という、彼を苦しめる思い込みを、もっと彼を力づける思い込みに、書き換えてしまえばいいのです。

セッションを通じて、中山さんの思い込みは、最終的に「私は、どんな状態であっても、その存在自体に価値がある」という、揺るぎない確信へと変わりました。

その後の変化は、劇的でした。しばらくしてから連絡をくれた彼は、こう言いました。

「あれから、不思議とお酒が嫌いになったんです。付き合いで飲む以外は、全く飲んでいません」

彼は、根性でガマンすることなく、ごく自然に、お酒をやめることができたのです。

まとめ:あなたの「問題」の根っこは、どこにありますか?

私たちの行動は、無意識の思い込みに、これほどまでに強く支配されています。もしあなたが、何か解決できない問題を抱えているとしたら、その表面的な行動の、さらに奥深くにある「思い込み」に目を向けてみると、想像もしなかった解決の糸口が見つかるかもしれません。


あなたの「無意識の思い込み」を、見つけ出しませんか?

今日の事例でお分かりいただけたように、私たちの行動を縛っている根本原因は、自分自身ではなかなか気づくことができない「無意識」の領域に隠されています。一人でそれを見つけ出し、書き換えるのは至難の業です。

もし、あなたが長年解決できない問題や、手放したいのに手放せない不健全な習慣を抱えているなら、一度プロのコーチを頼ってみてください。客観的な視点から、あなたの問題の「本当の根っこ」を特定し、それを力強いエネルギー源へと変えるお手伝いをします。

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この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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