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「それ、ただの自己満ですよ」部下を詰める上司が無意識に満たしている欲求とは

この記事のポイント

  • 部下を理詰めで追い詰める「詰める質問」は、成長を促すコーチングの「質問」とは全くの別物です。
  • 上司が部下を詰めているとき、その行動の裏には「自分が正しいと感じたい」「自分が優位に立ちたい」という強い欲求が隠されています。
  • その行為は、部下の成長のためではなく、上司自身の自尊心や自己重要感を満たすための「自己満足」になっている可能性が高いです。
  • 指導の目的が「部下のため」か「自分のため」か。部下と対話する際に、自分自身の感情を常に振り返ることが、パワハラを防ぎ、真のリーダーシップを育む鍵となります。

その「質問」、部下のためですか?自分のためですか?

先日、ある企業様からご依頼いただいた管理職研修の打ち合わせをしてきました。今回ご担当の人事の方は非常に熱心で、真剣に話を聞いてくださるだけでなく、鋭い質問やフィードバックをくださるので、おかげさまで研修の質がどんどん上がっています。

その中で、コーチングの必須スキルである「質問」の重要性についてお話しする場面がありました。「いかに良い質問を投げかけるかが、相手の思考の質を決めるんですよ」と。

すると、その人事担当者の方から、こんな質問をいただいたのです。

「質問が大事なのはよく分かりました。ですが、世の中には質問攻めというか、理詰めで部下を追い詰めるようなコミュニケーションを取る上司もいますよね。研修を受ける方が、そこを勘違いしないようにするには、どんなアドバイスがありますか?」

…いやぁ、本当に鋭いご指摘です。

「どうしようと思ってるの?」
「そのやり方だと、〇〇の場合は対応できないよね?どうするの?」
「やるべきだと分かっていたのに、どうしてやらなかったの?理由を教えて」

こんな風に、正論を武器に部下を追い詰める質問をする上司。どこの会社にも、一人くらいはいるのではないでしょうか…(私の偏見かもしれませんが)。

この本質的な問いに対して、私がふと口にした一言に、人事の方は「なるほど!」と深く納得してくださいました。今日は、その一言を皆さんにも共有したいと思います。

部下を追い詰める上司の、不都合な真実

その一言とは、これです。

「部下を追い詰めているとき、満たされているのは『上司の快感』ですからね」

ドキッとした方もいるかもしれませんね。もう少し詳しく説明しましょう。

「自分が正しい」という快感

私たち人間は、「自分が正しい」「自分がすごい」「自分が優秀だ」と感じるとき、脳内に快感物質が放出され、強い満足感を覚えることがあります。特に、競争心が強かったり、達成欲が高かったりする人ほど、その傾向は強まります。

さて、部下を理詰めで追い詰めている場面を想像してみてください。その構図において、「正しい」のは常にどちらでしょうか?…もちろん、上司ですよね。上司が「正しい」からこそ、部下の矛盾点や不備を、論理的に問い詰めていくことができるわけです。

そして、その行為の最中、上司の心の中では、無意識のうちに「やはり自分は正しい」「自分は優秀だ」という快感が生まれています。極端な言い方をすれば、部下をサンドバッグにして、自分の欲求を満たしている状態とも言えるのです。

それは指導か、自己満足か。

言うまでもありませんが、部下への質問や指導は、部下の能力向上や、チームとしての業務遂行のために行われるべきです。決して、上司のちっぽけな自尊心を満たすための道具であってはならないはずです。

もちろん、自分の正しさや自己重要感を満たすこと自体が悪いわけではありません。しかし、そのために部下の自尊心を一方的に傷つけていい理由には、決してならないのです。

部下と対話するとき、指導するとき、自分の心の中に、

  • 「相手を言い負かしてやりたい」
  • 「自分の正しさを証明したい」
  • 「自分の優位性を示したい」

といった感情が、少しでも湧き上がってはいないか。常に自分自身を振り返る冷静な視点を持つことが、私たちリーダーには求められています。


…という話を、「ぜひ研修の中に入れてほしい」とリクエストしていただけて、非常に光栄に感じています。ただ、すでに時間いっぱいパンパンの研修内容の、一体どこにこの深い話を入れ込もうか…。また一つ、嬉しい、しかし厄介な課題が増えてしまいました(笑)。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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