この記事のポイント
- 私たちは皆、「人生とは〇〇である」という、自分だけの「ビリーフ(思い込み)」を持っています。
- この無意識のビリーフが、現実の出来事の解釈や日々の行動を決定し、あなたの人生そのものを形作っています。
- 例えば「人生は修行だ」と信じていると、無意識に苦しい出来事を引き寄せ、人生がまるで修行のようになってしまうのです。
- 人生がうまくいかないと感じるなら、この根本的なビリーフを見つけ出し、書き換えることで、現実は劇的に好転する可能性があります。
優秀なのに、なぜか報われない…クライアントTさんの悩み
もう10年以上前になりますが、Tさんというクライアントさんがいました。Tさんは非常に地頭が良く、勉強熱心で、戦略やマーケティングにも精通している、個人で店舗を経営されている方でした。
そんな優秀なTさんが、私のコーチングを受けに来られたのです。
「自分の店の経営について、壁打ちがしたい」と始まったセッションでしたが、正直なところ、私が何かを教える必要はほとんどありませんでした。私が質問を投げかけると、Tさんご自身が勝手に答えを見つけていく、というスタイルです。
「売上は客数×客単価×リピート率ですよね。一人でやっているから客数はこれ以上増やせない。となると、上げるべきは客単価か…。あれ、どうして私、今までやってなかったんですかね?」
毎回こんな調子で、やるべきことは次々と明確になり、Tさんのビジネスは着実に前進しているように見えました。…しかし、4回目のセッションで、予想外の転機が訪れます。
【ご相談の事例】人生を変えた、たった一つの質問
その日も店の経営について話していたのですが、ふとした雑談の流れで、Tさんがポツリとこうこぼしたんです。
「なんだか、こんなに一生懸命やっても、あまり報われないんですよね。人生って、一体何なんでしょうねぇ…」
その言葉を聞いた私は、ただ、こう聞き返しました。
「そうですねぇ。Tさんにとって、人生って何だと思います?」
Tさんは少し考えた後、こう答えました。
「人生は…修行、ですかね」
私は、静かにこう返しました。
「なるほど、『人生は修行である』、ですか。…だから、Tさんの人生は修行みたいになっているのかもしれませんね」
その瞬間、Tさんは雷に打たれたように固まりました。
「!!!!!」
「そうか…!自分が人生を『修行』だと思い込んでいるから、修行みたいに苦しいことばかり起こるのか!どうりで大変なことばっかり起きるわけだ!」
「そうみたいですねぇ。じゃあ、その『人生は修行である』という定義を、今日からやめてみたらどうでしょう?人生を、何か別のものだと定義し直してみるんです」
「ああ、そうか。ただの思い込みですもんね。じゃあ…『人生は遊び』、とかにしたらいいんですかね?」
「いいですね!もし『人生は遊び』だとしたら、Tさんの人生は、これからどんな風に変わりそうですか?」
「…毎日が楽しくて、ワクワクして、充実した人生になりそうです!」
このやり取りをきっかけに、Tさんは「人生は修行である」という長年の思い込みを手放し、「人生は遊びである」と、自分の中で再定義しました。
人生のOSを書き換える「ビリーフ」の力
その翌月のセッションに現れたTさんは、まるで別人のようにエネルギッシュになっていました。
「中城さん、なんだか毎日がすごく楽しいんですよ!あれもやってみよう、これもやってみようって、次々にアイデアが湧いてくるんです。『失敗したらどうしよう』なんて不安が、嘘みたいになくなりました!」
もともと豊富な知識やノウハウを持っていたTさんは、それを堰を切ったように実行し始めます。挑戦して、失敗したら、それを貴重なフィードバックとしてすぐに改善し、また次の手を打つ。この好循環に入った結果、Tさんの店の業績はあっという間に向上し、一人ビジネスで月200万円以上の利益を安定して上げるまでになったのです。
「ビリーフ」があなたの現実を創っている
Tさんの人生を劇的に変えたもの。それは、「ビリーフ(Belief)」と呼ばれる、私たちの無意識領域にある「思い込み」や「信念」「〇〇とは××である」という個人的な定義です。
- 「人生とは、修行である」というビリーフを持つ人は、人生が試練の連続になります。
- 「恋愛とは、傷つくものである」というビリーフを持つ人は、恋愛をするたびに傷つく経験を繰り返します。
- 「仕事とは、我慢の対価にお金をもらうものだ」というビリーフを持つ人は、やりがいのある仕事にはなかなか巡り会えません。
このように、あなたが持っている「ビリーフ」が、あなたの思考や感情、行動を支配し、あなたの人生の質そのものを決定づけているのです。
なぜ自分の「ビリーフ」には、なかなか気づけないのか?
この強力な「ビリーフ」ですが、非常に厄介なことに、ほとんどの場合、本人にとっては無意識で「当たり前」の前提になっています。そのため、今の良くない現実を創り出している原因が、まさか自分自身の思い込みにあるとは、なかなか気づくことができないのです。
Tさんも、私が「だから修行みたいな人生になってるんですね」と指摘しなければ、今でも「人生は修行だ」と信じ続け、苦しい現実と戦っていたかもしれません。
だからこそ、この無意識の領域に根付いた「ビリーフ」を扱うには、客観的な視点を持つプロの手を借りることが、根本的な変化を起こすための有効な手段となるのです。
まとめ:あなたの人生の定義、一度見直してみませんか?
もし、あなたが今の状況に何かしらの生きづらさや不満を感じているなら、一度ご自身の「ビリーフ」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
「あなたにとって、仕事とは何ですか?」
「あなたにとって、お金とは何ですか?」
「あなたにとって、人間関係とは何ですか?」
その答えを書き換えることで、あなたの現実は、驚くほどあっけなく、そして劇的に変わってしまうかもしれませんよ。
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この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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