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【禁酒の事例】「痛みと快感」の法則が効かない時、本当に向き合うべき問題とは?

 

この記事のポイント

  • 人を動かす「痛みと快感」の原則は非常に強力ですが、それだけでは解決しない根深い問題も存在します。
  • 「変わらない痛み」と「変わる快感」を十分に理解しているのに動けない場合、その行動の裏には、より本質的な別の問題が隠されています。
  • 今回の事例では、「お酒をやめたい」という問題の根源に、本人も自覚していなかった「自信のなさ」がありました。
  • 表面的な問題に囚われず、その奥にある本質的な原因(自己評価、ビリーフなど)にアプローチすることこそが、根本解決への唯一の道です。

「痛みと快感」の法則。でも、それだけでは人は変われない?

私のコーチングは、世界No.1コーチとも言われるアンソニー・ロビンスの理論をベースにしています。そのため、「人は痛みを避け、快感を求める」という、人間の感情の原則に沿ってアプローチすることが非常に多いです。例えば、「変わらないこと=強烈な痛み」「変わること=最高の快感」という心のフレームをクライアントの中に作り上げることで、変化への強力なモチベーションを生み出します。

しかし、です。この原則は非常にパワフルですが、決して万能ではありません。時には、この原則だけでは人が変わらない、という場面に直面することもあるのです。

【ご相談の事例】「酒を飲み続ける痛み」を知っても、酒がやめられなかったOさん

以前コーチングした、経営者のOさん。彼からの依頼は「禁酒」でした。(お酒を飲むのが大好きな私によく頼んでくれたな、と思いますが…笑)

話を聞くと、Oさんはすでにご自身の状況を冷静に分析されていました。

  • 「お酒を飲み続けることが、自分の人生や健康にとって、いかに大きな損失(痛み)であるか」
  • 「お酒をやめた後に、どれほど素晴らしい毎日(快感)が待っているか」

この2つを、痛いほど理解していたのです。「もう飲むのは嫌だ、絶対にやめたい」と、心から願っていました。

…それなのに、飲まずにはいられない。

こうなると、アンソニー・ロビンスの言う「変わらないことに、さらに強烈な痛みを与える」というアプローチは使えません。これ以上「お酒を飲むことの痛み」をほじくり返しても、Oさんがただ苦しむだけで、何の解決にも繋がらないからです。

本当の原因は「お酒」ではなかった。隠されていた「自信のなさ」

原則が通用しないとき、私たちプロのコーチは、視野を広げ、全く違う角度からアプローチします。私はOさんと、仕事のこと、プライベートのこと、過去のこと、未来のこと…とにかく幅広く、様々な話を聴きました。

そして、一見無関係に見える会話の断片を繋ぎ合わせていく中で、ついに、本当の原因にたどり着いたのです。

Oさんを飲酒へと駆り立てていた、その不都合な真実。それは、彼自身も自覚していなかった、根深い「自信のなさ」でした。

自信がない。だけど経営者だから、自信のなさなどを見せてしまったら社員に舐められる。堂々としていなければならない。それで常に気を張って、隙のない完璧な社長を演じることで、社員の尊敬を勝ち取っていたのです(本人はそう思っていました)。

常に気を張って、自信があるように振る舞い、完璧な仕事のできる社長で居続けることは、Oさんにとって大きなストレスになっていました。一日の仕事が終わって家に帰ると、ボロボロに疲れた心を癒やすために、お酒を飲んですべてを忘れてしまわないとやっていられない。
これが、Oさんがお酒をやめられなかった理由だったんです。

ここまで分かれば、対処は簡単です。私は、お酒の話は一切せず、Oさんが本来持っているはずの「自信の種」を刺激し、彼自身の内なる素晴らしさを再発見してもらうことに集中しました。そして、揺るぎない自信を、彼の中に新たに構築していったのです。

その結果は、驚くべきものでした。後日、Oさんに様子を伺うと、

「あれから、付き合いで数回飲みましたが、それ以外では全く飲みたいとも思いません」

と、涼しい顔で言うのです。毎日潰れるまで飲んでいたのが嘘のようです。これまでは「飲んではいけない」と必死でガマンし、その限界が来るとまた飲んでしまう…という苦しい戦いを繰り返していた彼が、「そもそも飲みたいと思わない」ので、ガマンする必要すらない。ごく自然体で、禁酒に成功してしまったのです。

「原則」を鵜呑みにしない。目の前の「人」と向き合うことの重要性

教科書に書いてあることや、セミナーで教えてくれる「原則」は、非常に重要です。多くの先人たちの知恵と経験が体系化されたものであり、それを学ぶことは成功への近道となります。

しかし、現実は、常にその「原則」通りに進むとは限りません。そんなとき、原則に固執して「うまく行かないのは、あなたの努力が足りないからだ」と突き放すのではなく、知識や理論はいったん横に置き、目の前の「人」に真摯に向き合う。そして、その人だけの、オーダーメイドの解決策を一緒に見つけ出していく。

この幅の広さと、深さを常に追求し続けることこそが、私たちプロの仕事なのだと、改めて感じさせられた事例でした。

まとめ:あなたの「本当の問題」は、あなたが思っているソレではないかもしれない

もしあなたが、色々な方法を試したにも関わらず、なかなか変われずに悩んでいるとしたら。もしかしたら、あなたが問題だと思っていることは、本当の問題ではないのかもしれません。

禁酒の問題の根っこが、実は「自信のなさ」にあったように。あなたの問題の裏にも、全く予想もしなかった、本当の原因が隠されている可能性があるのです。


あなたの「本当の原因」、一緒に見つけませんか?

教科書通りの方法で解決しない問題は、その根が、あなた自身の無意識の領域にまで深く張っているサインです。そして、その根本原因を自分一人で見つけ出すのは、非常に困難です。

もし、あなたが「もう自分の力だけではどうにもならない」と感じているなら、ぜひ一度、プロのコーチを頼ってみてください。客観的な視点と専門的な質問を通じて、あなたの問題の「本当の根っこ」を特定し、そこから解決していくお手伝いをします。

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この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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