この記事のポイント
- 「リーダーになれ!」という上司の正論だけでは、部下は変わりません。むしろ、プレッシャーで萎縮させてしまう危険性があります。
- 部下がリーダーシップを発揮できない根本原因は、能力不足ではなく、「自信のなさ」や「失敗への恐れ」であることがほとんどです。
- 部下を変えるには、まず上司の関わり方を変える必要があります。鍵となるのは「承認」「信頼」「励まし」「安心」という4つの要素です。
- 上司が「部下を成功させる」という覚悟を持って支援することで、部下は安心して挑戦し、自らリーダーへと成長していきます。
「能力は高いのに…」上司を悩ませる“リーダーになれない”部下
「将来のリーダーとして期待している部下がいるんです。でも、本人はその気がないのか、目の前の現場仕事ばかり。
もっと高い視座を持ってほしいんですが…」
これは、私が管理職コーチングを担当している課長のKさんから、今年の6月頃に受けたご相談です。
Kさんは、部下育成に非常に熱心な、優秀なマネージャーです。
しかし、チームの中でも特に能力が高いエース社員のAさんが
次のリーダーとしての殻を破れずにいることに、もどかしさを感じていました。
「君にはリーダーになってほしいんだ」
「目の前のことばかりでは困る」
Kさんは、Aさんへの期待を何度も言葉にして伝えていましたが、
その言葉は一向に響いている様子がありませんでした。
なぜ、Kさんの「期待」は、Aさんに届かなかったのでしょうか?
部下を変える前に、上司の“見方”を変える
コーチングの中で、私はKさんに一つの可能性をお伝えしました。
「Aさんは、自信がなくて、失敗することを極度に怖れているのかもしれません」と。
リーダーになるということは、これまで以上の責任を負い、未知の課題に挑戦し、
失敗するリスクを引き受けるということです。
Aさんは、その重圧から逃れるために、あえて「目の前の仕事」に没頭し、
自分のテリトリーから出ようとしなかったのではないでしょうか。
私の言葉を聞いたKさんの顔つきが変わりました。
「なるほど…。それなら、私がやるべきことは、彼を責めることじゃない。
彼が自信を持てるように、徹底的にサポートすることですね」
この瞬間から、KさんのAさんに対する関わり方は、180度変わりました。
部下をリーダーに覚醒させた、上司Kさんの4つの行動
Kさんが、Aさんの「リーダーの目」を開かせるために、愚直に、そして粘り強く続けた関わり方は、大きく4つに分類できます。
これは、部下育成に悩むすべての管理職にとって、非常に重要なヒントとなるはずです。
行動1:承認する(能力や努力を、具体的に認める)
まずは、Aさんがこれまで積み上げてきた実績や、日々の努力を具体的に言葉にして認め、承認し続けました。
「君のこの能力は、チームにとって不可欠だ」と伝えることで、Aさんの自己肯定感を高めていきました。
行動2:信頼する(「あなたならできる」と信じ、伝える)
「私は、君ならできると信じているよ」。この言葉と共に、少しストレッチした役割を任せました。
指示命令ではなく、「君を信頼している」というメッセージを伝え続けることで、
Aさんの中に「期待に応えたい」という前向きな責任感が芽生えていきました。
行動3:励ます(完璧を求めず、小さな一歩を促す)
「いきなり100点満点じゃなくていい。まずは10点でもいいから、とにかくやってみよう」。
失敗を恐れるAさんに対し、Kさんは完璧主義のプレッシャーを取り除き、
挑戦へのハードルを極限まで下げて励まし続けました。
行動4:安心させる(「失敗しても私がいる」という安全基地を作る)
そして最も重要なのが、これです。
「もし失敗しても、責任はすべて私が取る。だから、安心して思い切りやってこい」。
この言葉が、Aさんの心にあった最後のブレーキを外しました。
上司が絶対的な“安全基地”になってくれるという確信が、部下に挑戦する勇気を与えたのです。
たった4ヶ月で起きた、劇的な変化
Kさんがこの関わり方を徹底し始めてから4ヶ月。先日行われた面談で、彼は満面の笑みでこう報告してくれました。
「中城さん、あのAさんが、今では5人のチームを率いるプロジェクトを自ら立案して、幹部に提案するようになったんです。
あれだけ目の前のことしか考えられなかった彼が、人を巻き込み、視座を上げてくれました!」
Aさんの「成功」は、会社の発展に直接貢献するだけでなく、
チーム全体に「自分も挑戦していいんだ」というポジティブな連鎖を生み出していくことでしょう。
結論:上司の仕事は、部下を成功させること
研修講師の大先輩が教えてくれた、「上司の仕事は、部下を成功させることだ」という言葉があります。
今回のKさんとAさんの事例は、まさにその言葉を体現するものでした。
部下は、上司が信じて任せてくれることで、自分が思っている以上の力を発揮します。
あなたの部下の中にも、まだ覚醒していないAさんがいるかもしれません。
その才能を開花させる鍵は、あなた自身の関わり方の中にあるのです。
あなたの関わり方一つで、部下はリーダーに変わる
今回のKさんは、コーチングという第三者の視点が入ったことで、ご自身の関わり方の癖に気づき、部下へのアプローチを劇的に変えることができました。もし、あなたが部下育成において「何をやっても響かない」「どうすれば本人のやる気スイッチが入るのか分からない」とお悩みなら、ぜひ一度、プロのコーチを頼ってみてください。
客観的な視点から、あなたと部下の関係性を見つめ直し、明日からすぐに実践できる、具体的な関わり方のヒントをご提案します。あなたのチームを、そして会社を次のステージへ引き上げるのは、リーダーに覚醒した部下の力です。
この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
部下との関係構築や育成方法にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
初めてでも10分で1on1ミーティングができるツールを無料プレゼント!
- 「部下育成のために1on1がいいっていうけど、何を話せばいいの?」
- 「部下と面談しても話が盛り上がらないし、部下の行動も変わらないよ」
- 「1on1なんて、やっても時間の無駄なんじゃないの!?」
普段忙しい管理職の方には、こう思う方が多いのではないでしょうか?
- 会社で1on1をやれと言われたけど、部下と何を話していいかわからない
- 部下と面談しても話が盛り上がらないし、部下の行動も変わらない
- 流行りの1on1をやっているけど、いつも上司が一方的に話して終わってしまう
こんな問題を、1枚のシートで解決できます!