日々過ごしていると、怒りを感じることってありますよね。
ちょっとした「イラッ!」くらいの怒りもあれば、
激しく燃える激情のような怒りもあるし、
怨嗟にも似た渦巻くような怒りもあります。
それぞれ、いろいろな対処法があるんですが、
今回は根深くていつまでも消えない、強い怒りについて
過去の事例を元にお話ししてみようと思います。
以前コーチングさせていただいたSさんの事例でお話しします。
ご本人から許可をいただいたので
詳細を伏せた上で、重要なポイントをお伝えしますね。
Sさんは、ある会社の花形部署で
長い間キャリアを積んできていました。
ご自身も自分の仕事に誇りを持っていたし、
実際に能力も高く、多くの実績を出してきていました。
ところが、ある日突然、異動を命じられてしまったんです。
異動先は、花形とはほど遠い「誰でもできる」仕事。
Sさんは「こんなのは左遷じゃないか!」と憤っていたのです。
コーチングが始まった直後から、ずっと
「自分がどれだけ今の仕事で貢献してきたか」
「今回の異動がどれだけ理不尽なものなのか」
「周りの人がどれだけ自分を大切にしていないか」
このような怒りを語っておられました。
Sさんの様子から、かなり根が深い怒りだなと思って
感情を吐き出しきるまで話を聴いていたんですが、
30分以上経っても怒りが収まることはなく、
吐き出しても吐き出しても尽きることがないという印象でした。
そこで、Sさんの怒りの根っこを探るべく、
いろいろと質問をしてみました。
「今回の異動は、Sさんにとってどんな意味があると思いましたか?」
「自分のキャリアを否定されたように感じました」
「否定されたのはキャリアですか?」
「キャリアもですけど、自分自身を否定されたとまで思います」
Sさんは、自分が強い思いを持っていた仕事を否定された、
キャリアを、ひいては自分自身を否定された、
と感じて、それに対して強い怒りを感じていたようです。
これだけの強い怒りを引き起こすということは、
裏を返すと
【Sさんにとって、それだけ大切なことだった】
ということです。
つまりSさんにとって、自分のキャリアが
人生においてとても大切なものだった、と。
それを否定されたから、怒りが収まらないわけです。
そこで、次に気になることを尋ねていきました。
「Sさんにとってキャリアって、何ですか?」
「自分の生きる術、生きる道です」
「そのキャリアがなくなると、どうなると思ってますか?」
「自分がエリートでなくなる… あっ!」
Sさんがいたのは花形の部署で、優秀な人が集まる部門。
いわゆる「エリート」の部署でした。
Sさんは無意識に自分がエリートだと自覚し、
エリートであることが自分の存在意義のようになっていました。
「左遷」とも受け取れる異動によって、自分がエリートであることが否定され、
それがすなわち、自分の存在意義を否定された。
これがSさんにとって許しがたく、辛く、
そして無意識に大きな恐怖にまでなっていた。
これが、Sさんの尽きない怒りの正体でした。
自分はエリートでないと存在意義がない。
エリートがやるような仕事でないと、エリートでいられない。
エリートでなくなったら、人から尊敬されない。
それを認めたくなくて、存在意義がないという恐れを
「怒り」という形に変えて感じていた、というわけです。
怒りがいつまでも収まらないとき、
「アンガーマネジメント」で落ち着きを取り戻そうとか、
解釈を変えて冷静になろうとか、
そんな方法が紹介されていますが、
本当は「怒り」というのは大切な感情です。
それを抑え込んだり目を背けたりするのは
自分の本当の気持ちを無視することにもつながります。
そうではなく、「怒り」の奥深くにある
自分の本当の感情、本当に大切にしていること、
自分が持っている根源的な恐怖、
そういったものに向き合う機会にして行く。
その方が、最後には怒りが解消されていきます。
Sさんはその後、「エリートでないと存在意義がない」
という思い込みと恐怖心を解消したのですが、
だいぶ長くなってきてしまいましたので、
解消する方法などについては、また機会があればご紹介します。
今回は、「強い怒りがあるなら、その奥の気持ちを探ってみよう」
ということで、参考にしていただければ幸いです。
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