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「この部下、もう無理かも…」見切りをつける前に確認すべき”たった一つの基準”

この記事のポイント

  • 部下を「育てるべきか、見切るべきか」という問いは、経営者や上司が抱える永遠のジレンマです。
  • その判断基準は、能力や成果ではなく、本人に「現状を改善しようとする意思」があるかどうか、ただ一点に絞られます。
  • 改善の意思がなく、会社にぶら下がるだけの社員にリソースを割き続けることは、組織全体のリスクになり得ます。
  • ただし「意欲がない」と即断するのは危険です。その意欲を引き出すための関わりを、上司としてやり尽くしたかを自問することが重要です。

経営者・上司が抱える永遠のジレンマ

私はプロのコーチとして、「どんな状況でも、かならず光明はある」「諦めたらそこで試合終了」という信念を持ってクライアントさんに関わっています。こちらから可能性を諦めることは絶対にありません。

このスタンスは、部下の育成においても非常に重要だと考えています。どんなに扱いにくく、成長が遅いと感じる部下であっても、きっと改善の道はあると信じて、諦めずに向き合う姿勢がリーダーには求められます。

…と、これはあくまで理想論。現実の企業経営は、そうも言っていられない厳しい側面がありますよね。

会社は利益を上げて存続させていかなければなりません。生産性が著しく低い人材の育成に経営資源を割きすぎた結果、会社全体が傾いてしまっては本末転倒です。どこかのタイミングで、「これ以上、あなたを雇い続けることはできない」と、非情な決断、つまり「見切り」をつけなければならない場面もあるでしょう。

可能な限り育てたい。でも、そればかりに構ってもいられない。このジレンマとの戦いは、私がこれまでお会いしてきた多くの経営者や上司の方々が、まさに直面してきたものでした。

「見切り時」の判断を誤ると起こる2つのリスク

この「見切り」のライン設定は、本当に難しい問題です。判断を誤ると、組織は大きなダメージを受けます。

リスク①:見切りが早すぎると、心理的安全性が崩壊する

「目標数値を達成できなければクビ」「少しでも期待に応えられなければ見放される」…。そんな空気が蔓延した会社では、社員は安心して挑戦することができません。常に上司の顔色をうかがい、失敗を恐れて萎縮してしまうため、結果として組織全体の生産性が著しく低下してしまいます。

リスク②:見切りが遅すぎると、経営資源が枯渇する

一方で、改善の見込みのない社員にいつまでも固執し、時間やコスト、そして何より上司であるあなたの貴重な精神的エネルギーを注ぎ込み続けることも、大きなリスクです。他の成長意欲のある社員へのリソースが手薄になり、組織全体の成長を鈍化させる原因になりかねません。

【コーチングの視点】見切りをつけるべき、たった一つの判断基準

では、この二つのリスクを避け、適切な判断を下すには、どこにラインを引けばいいのでしょうか。

もちろん、絶対の正解はありません。しかし、コーチングの視点で言うと、一つの明確な基準が見えてきます。それは、能力やスキル、成果といった目に見えるものではありません。

判断基準は、ただ一つ。
「本人に、現状を改善しようという意思があるかどうか」です。

人が自ら変わるためには、本人の「変わりたい」という意思が不可欠です。「このままじゃダメだ」「やり方は分からないけど、もっと良くなりたい」という気持ちがあり、たとえ不器用でも何かに取り組もうとしている。そんな意思が見える限り、その人を支援する価値は十分にあります。

ですが、もし部下が、

  • 自分は何も変えず、会社にぶら下がって給料をもらうことしか考えていない。
  • 自分は悪くないのだから、変わるべきなのは周りの方だと思っている。

このような姿勢であるならば、改善は極めて困難です。本人がそもそも、変わる気がないのですから。特に、会社から一方的に「奪う」思考の持ち主である場合は、組織に与える悪影響も大きいため、厳しい判断を検討せざるを得ないかもしれません。

お金を払ってコーチングを受けに来る方ですら、「お金を払ったんだから、あなたが私を変えてくれるんでしょ?」という姿勢の方はお断りすることがあります。それほど、「本人の意思」は何よりも重要なのです。

ただし早計は禁物。その「意思」を引き出す努力はしましたか?

知識や能力が未熟でも、改善する「意欲」さえあれば、人はいくらでも成長できます。逆に、どんなに優秀でも、「意欲」がなければ何も変わりません。

ですから、「この部下は改善の意思があるか?」という視点で、今後の関わり方を考えてみてはいかがでしょうか。

…と、ここで話を終えるのは簡単ですが、もう一つだけ、とても大事なことがあります。

それは、「こいつはやる気がないからもうダメだ」と、あまりに早く決めつけていませんか?ということです。

もしかしたら、あなたの関わり方一つで、その部下の心に「意欲の火」を灯すことができるかもしれません。そもそも「やる気がない」ように見える部下の内面で何が起こっているのかを理解し、その原因を取り除くアプローチを試してみる価値は十分にあります。その具体的な方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。

「部下にやる気がない…」と嘆く前に。上司が知るべき3つの原因と対処法

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意欲を引き出すためのあらゆる手を尽くしてから最終判断をしても、決して遅くはないはずです。やはり、人と人との関わりは、そう単純ではないのですから。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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