この記事のポイント
- 「やるべきなのに動けない」というモチベーション低下の裏には、自分でも気づいていない「恐怖心」が隠れていることが多いです。
- 「苦手」であることと、行動を止めてしまうほどの「恐怖」は、似ているようで全く違う感情です。
- 人の行動を止める唯一にして最大の要因は「恐怖心」であり、これは本来、身の安全を守るための本能的なものです。
- 行動できない自分を変えるには、まず「自分は一体、何を恐れているんだろう?」と自問し、恐怖の正体を突き止めることが第一歩になります。
なぜかやる気が出ない…その原因、本当にわかっていますか?
毎日、仕事に前向きに取り組んでいる方でも、ふと「今日はどうにもやる気が出ないな…」「モチベーションが上がらない…」と感じる日はありますよね。
その原因は、単純な体調不良だったり、あるいは心理学でいう「アンダーマイニング効果」――つまり、好きでやっていたことが報酬(給料など)をもらうことで「報酬のためにやる」にすり替わり、かえってやる気が削がれてしまう――のような、少し複雑なケースもあります。
ですが実は、多くの方が見落としている、もっと根源的な原因があるんです。今回は、その「見えない原因」について、クライアントさんとの事例を交えながらお話ししていこうと思います。
【ご相談の事例】クライアントMさんが抱えていた「見えないブレーキ」
先日、私のコーチングプログラムを受けてくださっているクライアントのMさんと、セッションをしていた時のことでした。
Mさんは目標達成に向けて、やりたいことも明確になっており、日々とても頑張っていらっしゃいます。ですが、話がある特定の分野に及ぶと、どうも口調が重くなる。明らかにモチベーションが下がっているのが伝わってくるんです。
その分野というのが、「営業」でした。
Mさん自身、営業に強い苦手意識があり、アポイントの電話やお客様へのプレゼンに大きな緊張を感じてしまう、と。ですから、資料を作成したり、サービスのプログラムを考えたり、といった準備段階のタスクは非常に前向きに進むのですが、いざ「お客様にアプローチする」という行動になると、途端に足がすくんでしまう。まさに、モチベーションのブレーキがかかってしまう状態だったんですね。
では、Mさんのモチベーションを下げていた、そのブレーキの正体は何だったのでしょうか?
モチベーション低下の黒幕、その正体は「恐怖心」
もちろん、「営業が苦手だから」というのが直接的な原因です。ですが、ここで思考を止めずに、もう一段階だけ深く掘り下げてみることが重要なんです。
その本質的な原因、それこそが【恐怖心】です。
「苦手」と「恐怖」は似て非なるもの
「苦手意識と何が違うの?」と思われるかもしれませんね。ですが、この二つは意味合いが大きく異なります。
例えば、苦手な料理でも、家族のために前向きに挑戦することはできますよね。得意ではないスポーツでも、仲間と楽しむためならモチベーション高く取り組めることもあります。
つまり、「苦手」であること自体が、必ずしも行動の妨げになるわけではないんです。問題は、その苦手意識の奥に「恐怖」の感情が隠れているかどうか、なんですね。
世界的なコーチであるアンソニー・ロビンスも言っています。
「人の行動を止める唯一のものは【恐怖心】である」と。
私たちは本能的に【怖い】と感じることに対して、行動を止めてしまうようにできているのです。
なぜ私たちは「大して怖くないこと」を恐れてしまうのか?
もちろん、恐怖心は生きる上で不可欠な感情です。恐怖心がなければ、私たちは命綱なしでバンジージャンプを飛んでしまうかもしれませんからね(笑)。自分の身を守るために、恐怖は絶対に必要なセーフティネットです。
しかし、問題なのは、客観的に見ればたいして危険ではないことに対して、過剰な恐怖を感じてしまうケースです。
Mさんの「営業」の例で考えてみましょう。営業でお客様に断られたからといって、命まで取られるわけではありません。せいぜい、少し気まずい思いをしたり、厳しい言葉を言われたりするくらいでしょう。もちろん、すごく嫌ですけど、生命の危険はありませんよね。
それなのに、なぜ私たちはそこまで強く恐れてしまうのか。それは、精神的な痛みに対する恐怖があるからです。
- お客様に嫌われるのが怖い
- 断られて、自分の価値を否定されるのが怖い
- うまく話せず、恥をかくのが怖い
- 「いらない」と言われるのが怖い
- 自分の商品には価値がないと実感してしまうのが怖い
このような、心の傷を負うことへの恐怖が、私たちの足に重りをつけ、「やるべきなのに動けない」という状態を作り出しているのです。
行動できない自分を変える、最初の一歩
もしあなたが、「目標も理由も明確なのに、なぜかやる気が出ない…」と感じているなら、それは根性がないからでも、怠けているからでもありません。多くの場合、あなたの中で何かが「恐怖」を感じ、あなたを守ろうとしてくれているだけなのです。
ですから、そんな自分を責める必要はまったくありません。
まずやってみてほしいのは、たった一つ。静かな場所で、自分自身にこう問いかけてみることです。
「自分は一体、何をそんなに恐れているんだろう?」
この問いかけが、見えない恐怖の正体を突き止め、次の一歩を踏み出すための、何より力強いスタートラインになります。
ちなみに、先ほどのクライアントMさんは、ご自身の恐怖心をしっかりと自覚した上で、それを乗り越えようと着実に行動を積み重ねています。「正直、まだビビってますよ!」と笑いながらも前に進むその姿勢は、コーチである私自身も、心から見習いたいと思っています。
この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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