この記事のポイント
- プライドが高い部下には、頭ごなしの「指示」ではなく、意見を求める「提案」形式で仕事を任せることが有効です。
- 相手の自己重要感を満たすため、「あなたを頼りにしている」という姿勢を一貫して示すことが信頼関係の第一歩になります。
- ミスを指摘する際は、叱責するのではなく、本人が「自分で発見した」という形に導くことで、素直な改善行動を促せます。
- 仕事の成果や手柄を部下のものとして「承認」することで、部下は「この人のために頑張りたい」と思うようになります。
なぜ「プライドが高い部下」の扱いはこれほど難しいのか?
あなたの職場にもいませんか? 能力はそこそこあるけれど、どうにもプライドが高くて扱いにくい…と感じる部下。
最近、こうしたタイプの若手社員は特に増えている、と多くの管理職の方が悩んでいます。私自身が会社員だった頃を思い出しても、確かにいましたね、そういうタイプの同僚や後輩が。
彼らは、上から目線で指示をすれば強く反発するし、かといって下手に気を遣うと、今度は増長して言うことを聞かなくなる…。本当にマネジメントが難しいんですよね。お気持ちはよくわかります。
では、なぜ彼らはそんなにプライドが高く、扱いが難しいのでしょうか。
その根底には、「自分は優秀だと思いたい」「自分の価値を否定されたくない」という、強い承認欲求と自己防衛の心理が隠れています。
今日は、この心理を逆手にとって、プライドの高い部下を見事にマネジメントした、ある優秀なリーダーの話をご紹介します。きっと、あなたの明日からのマネジメントのヒントが見つかるはずですよ。
【ケーススタディ】デキる上司「Mさん」の見事な人心掌握術
まずは、今回の登場人物をご紹介しましょう。
【登場人物】
- Mさん:IT企業勤務の入社4年目SE。上司や後輩からの信頼も厚い、人心掌握に長けたスーパー主任。
- Nくん:今年入社した新人。能力は低くないが、その分プライドが高く、ミスをすると実に巧みな言い訳をする。
ステップ1:仕事を任せる時 - 「指示」ではなく「提案」でプライドをくすぐる
ある日、Mさんは新人のNくんに初めての仕事を任せます。
Mさん:「N、お前の初仕事だ。F社のプログラミング、よろしく頼むな」
Nくん:「はい、よろしくお願いします!(よーし、頑張るぞ!)」
Mさん:「仕様書はこれで、〇〇の処理をやるんだけどさ。俺は△△みたいにやったら効率的だと思うんだ。でも、Nはどう思う?」
Nくん:「(え、意見を求めてくれた…)ええ、それで良いと思います!」
Mさん:「そっか。じゃあ頼むな。もし、もっと良いやり方思いついたら、ぜひ教えてくれよ。俺、プログラミングはちょっと苦手だからさ。難しいところはお前に任せるぞ。もし詰まったら一応、相談には乗るからな。」
Nくん:「はい、任せてください!(Mさんより良い方法を見つけて、すごいって思わせてやる!)」
【中城の解説】Mさんが使った2つのポイント
ここのMさんの対応、本当に見事ですよね。ポイントは2つです。
1. 「指示」ではなく「提案」で意見を求めたこと
自分はデキると思っているNくんに、「こうやれ」と一方的に指示すると、彼は「もっと良いやり方があるのに」と反発します。そこでMさんは「こう思うけど、どう思う?」と意見を求めることで、Nくんのプライドを尊重し、素直に話を聞く体制を作りました。
2. 「君はデキる」という前提で頼りにする姿勢を見せたこと
「難しいことはお前に任せる」と言われることで、Nくんは「自分は認められ、頼りにされている」と感じ、自己重要感が満たされます。MさんはNくんより圧倒的にスキルが高いにも関わらず、あえて「苦手だから」と下手に出ることで、Nくんの責任感とやる気を引き出したのです。
ステップ2:進捗を確認する時 - 「監視」ではなく「関心」を示す
仕事を任せた後も、Mさんの関わり方は絶妙です。
Mさん:(Nくんの画面をのぞき込み)「お、面白い処理やってるじゃん。すごいな。ここのデータってどう扱ってるの?」
Nくん:「ああ、これはですね…(得意げに説明)」
Mさん:「へぇ、やるじゃんか。調子良さそうだな。ちなみに、進み具合はどれくらい?」
Nくん:「予定より少し速いくらいです。納期は問題ありません!」
Mさん:「そうか、さすがだな。その調子で頼むぞ!」
【中城の解説】プレッシャーを与えずに状況を把握する技術
進捗確認でやりがちなのが、「どこまで進んだんだ?」という詰問口調です。これでは部下は「監視されている」と感じ、報告が苦痛になります。MさんはまずNくんの仕事自体に「関心」を示し、具体的に褒めています。相手に気持ちよく話をさせた上で、「ちなみに…」と軽い感じで進捗を聞くことで、プレッシャーを感じさせずに報告しやすい空気を作っているのです。
ステップ3:ミスを指摘する時 - 「叱責」ではなく「発見」させる
仕事にミスはつきものです。Mさんは、Nくんのミスにどう対処したのでしょうか。
Mさん:「だいぶ出来てきたな。ここで一回テストしてみようぜ。あ、〇〇の場合のテストデータも用意しとけよ。間違いやすいから」
(テスト後)
Mさん:「あれ?このデータ、ここに出力されるんで合ってたっけ?」
Nくん:「いえ、おかしいですね…これじゃまずいです。」
Mさん:「そっか、違ってたか。本番前でよかったな!じゃ、原因わかったら教えてくれ。」
(しばらくして)
Nくん:「原因わかりました!ここの処理が抜けてました。修正したら動きます!」
Mさん:「お、早かったな。さすがだ。じゃあ、同じような処理をしてる他のプログラムも、同じミスしてるかもな。ついでに確認してみたらどうだ?」
【中城の解説】「自分で気づかせる」ことの重要性
プライドが高い人は、他人からミスを指摘されるとプライドが傷つき、言い訳や反発に走りがちです。Mさんは「ここが間違っている」とは一言も言いません。テストを促し、質問を投げかけることで、Nくん自身に「あれ、おかしいぞ」と”発見”させたのです。
自分で見つけたミスは、素直に自分の責任として受け入れられます。さらにMさんはミスを責めずに「先に見つかってよかったな」と承認し、自力で解決させることで、失敗を「学びの経験」に変えさせています。これも上司の重要な役割ですね。
ステップ4:仕事を終えた時 - 「手柄」を部下に持たせ「承認」する
無事にプロジェクトが終了。お客さんからの評価も上々でした。その時のMさんの最後の一言が、二人の関係を決定的なものにします。
Mさん:「N、よくやったな!お客さんも、すごく喜んでたぞ。全部お前のおかげだ。ありがとう!」
この一件を通して、NくんはMさんのことを「自分のことを認め、成長させてくれる最高の先輩だ」と心から信頼するようになりました。この関係性ができてしまえば、Mさんが多少厳しい要求や無茶振りをしても、Nくんは「この人のためなら」と頑張って応えるようになります。
まとめ:今日からできる、プライドの高い部下との関係を変える一歩
Mさんが実践したことは、実は非常にシンプルです。
- 部下の性格やスキルを普段からよく観察する。
- 重要なポイントは先回りしてフォローする。
- 基本的に部下を信じて任せ、失敗しても責めない。
- 手柄は部下のものとして、心から承認する。
これを全て完璧にやろうとすると大変かもしれませんが、まずはどれか一つでも取り入れてみてはいかがでしょうか。「指示」を「提案」に変えてみる、だけでも、部下の反応は驚くほど変わるはずです。
今回ご紹介したMさんの手法、ぜひあなたのマネジメントにも活かしてみてください。
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この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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