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【危険】「モチベーション不要論」を真に受けてはいけない理由と、感情を力に変える技術

この記事のポイント

  • 巷で言われる「モチベーション不要論」は一理ありますが、感情を完全に無視して行動できるのは、ごく一部の限られた人だけです。
  • 普通の人が感情を無理に押し殺して行動しようとすると、心身に不調をきたす深刻なリスクがあります。
  • プロの思考法は、感情を「無視する」のではなく、意識的に「コントロール」し、行動のエネルギー源に変えることです。
  • 感情をコントロールする鍵は、意識の「フォーカス」を切り替えることにあり、それは効果的な「質問」によって可能になります。

「モチベーションに頼るな」のワナ。あなたは本当に“機械”になれますか?

最近、SNSなどで「モチベーションに頼るな」「モチベーションなんて不要だ」といった投稿を時々見かけます。モチベーションを扱うことを仕事にしている私としては、「おいおい、マジかよ」と、ちょっと穏やかではいられない言葉です(笑)。

もちろん、その主張を読んでみると、一理あるな、と思う部分もあります。

「モチベーションは感情であり、コントロールできない。そんな不確かなものに頼ると仕事が安定しなくなる」
「やる気がないからやらない、というのは甘え。やるべきことを粛々とやればいい」
「感情に振り回されるようではプロとして未熟だ」

確かにその通りです。気分によって仕事の出来が左右されるようではプロとは言えませんし、どんな気持ちであれ、必要な行動を取ることが結果に繋がるのも事実。なので、「言ってることは、まあ分かる」とは思うんです。

ですが、私が18年間、人の感情やモチベーションと向き合ってきた経験から断言できるのは、「その考え方で、本当に“粛々と”やれる人は、ほんの一握り、いや、一つまみくらいしかいない」ということです。

人間は感情の生き物です。気分が乗れば仕事も捗るし、悩みがあれば仕事が手につかなくなる。これがごく自然な姿です。「仕事だから」と、感情を完全に切り離して行動できる人は、ほとんどいません。

さらに危険なのは、「そうだ、感情に振り回されてはいけないんだ」と、自分のネガティブな感情を心の奥底に無理やり押し込めてしまうことです。短期的には行動できるかもしれませんが、押し殺した感情は消えてなくなりません。ストレスとなって自律神経を乱し、やがて心身を壊してしまいます。

以前、やりたくない仕事を感情を押し殺して続けていた女性が、ある日突然声が出なくなり、コールセンターの仕事を続けられなくなった、という事例もありました。感情を無視することは、それほど大きなリスクを伴うのです。

プロは感情を「無視」しない。「コントロール」する

「じゃあ結局、やる気が出ないときはやらなくていいってこと?」と思うかもしれませんが、もちろん、そんなことはありません。それなら私たちコーチの仕事はなくなってしまいますからね(笑)。

プロのコーチは、この「感情」を上手にコントロールして、やる気のある状態を意図的に作り出し、質の高い行動ができるようにサポートする専門家です。

感情が行動を生み出すメカニズム

私たちの行動は、基本的に『感情→選択→行動→結果』というプロセスで生まれます。多くの人は「感情はコントロールできない」と思い込んでいるか、あるいは「コントロールする」と言いながら、感情を無理やり押し殺すことしかできません。しかし、事実は違います。感情は、自在にコントロールすることが可能なのです。

【実践編】感情を自在に操る技術「フォーカス・コントロール」

では、どうやってコントロールするのか?実に様々なアプローチがありますが、今日はその中でも特に強力な技術の一つをご紹介します。

意識の「焦点(フォーカス)」が感情を作る

その技術とは、「フォーカス」です。フォーカスと聞くと、写真週刊誌を思い出す方は私と同世代以上だと思いますが(笑)、もちろんそっちではなく、「焦点」という意味です。

フォーカスを切り替えることで感情が変わるイメージ

私たちの感情は、意識の焦点をどこに向けるか(=何を考えるか)で決まります。ポジティブな側面にフォーカスすればポジティブな感情が生まれ、ネガティブな側面にフォーカスすればネガティブな感情が生まれる。非常にシンプルな仕組みです。

例えば、何かと難癖をつけてくる取引先がいたとしましょう。

  • ネガティブなフォーカス:「面倒なことばかり言ってくる、嫌なやつだ」と相手の嫌な点に意識を向けると、「めんどくさいな…」という嫌な感情になります。
  • ポジティブなフォーカス:「こんなに手強い相手なら、自分の営業力が鍛えられるな!」と自己成長の機会として意識を向けると、「よーし、やってやるか!」と逆に燃えてきたりします。

「難癖をつけてくる取引先」という状況は何も変わらないのに、フォーカス一つで、感情は真逆になってしまうのです。そして、前向きな感情は、「どうすればこの人を攻略できるだろう?」という質の高い思考を生み出し、これまでの自分を超えるレベルの行動へと繋がっていく可能性を秘めています。

どうやってフォーカスを変えるのか?鍵は「質問」にある

ただ、このフォーカスというのも、基本的には無意識の反応です。「よし、ポジティブに考えよう!」と意識するだけでは、いつの間にか元のネガティブな思考に戻ってしまうのが人間というものです。

そこで、脳のある習性を利用します。それは、「脳は、質問されると、その答えを自動的に探し始めてしまう」という習性です。「昨日の夕飯、何食べた?」と聞かれると、その瞬間、意識は昨日の食卓に向かいますよね。これと同じです。

つまり、自分自身に効果的な「質問」を投げかけることで、フォーカスを意図的にコントロールし、望む感情を作り出すことができるのです。

とはいえ、「効果的な質問を考える」のも難しいと思いますので、今日は一つ、万能の質問をご紹介します。これは、世界的なコーチであるアンソニー・ロビンスの奥様、セージ・ロビンスが使っている質問で、「What's good in this?」というものです。

日本語に訳すと、「この状況の中にある、良いことは何だろう?」といった感じでしょうか。

どんなに最悪に見える状況でも、この質問を自分に投げかけることで、脳はその状況の良い側面を探し始め、強制的にポジティブな側面へとフォーカスを向けてくれるのです。

まとめ:感情は敵じゃない。最強の味方である

もちろん、これは何でもかんでもポジティブに捉えようとする、現実逃避の「ポリアンナ症候群」とは違います。厳しい現実から目を背けるのではなく、その現実の中にある「プラスの側面」を見つけ出し、それを力に変えるための技術です。

感情は、あなたのパフォーマンスを邪魔する敵ではありません。上手にコントロールすれば、あなたを突き動かす、最強の味方になってくれるのです。ぜひ、この「質問によるフォーカス・コントロール」を試してみてください。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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