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【優秀なのに扱いづらい…】能力は高いがコミュ力が低い部下への正しい褒め方

この記事のポイント

  • 能力が高い一方でコミュ力が低い人の多くは、根本的な「自己肯定感の低さ」を抱えています。
  • 彼らの「能力」を褒めることは、かえって能力への固執を強め、問題を悪化させる危険性があります。
  • 本当に有効なのは、成果や能力といった「条件」ではなく、その人の「人格」や「あり方」そのものを褒め、無条件に肯定することです。
  • 「ありのままの自分でいていい」という安心感(心理的安全性)が、彼らの心を開かせ、円滑なコミュニケーションの土台となります。

優秀な人ほどハマる「能力は高いが、扱いづらい」という落とし穴

今、ある大手企業様の管理職向け研修プログラムを構築しています。さすがは大企業だけあって、皆さん非常に優秀な方ばかり。そんな方々に私が何かを教えるなど、恐縮するばかりなのですが、実は、優秀な方々だからこそハマってしまう、特有の落とし穴というものが存在するんです。

これは、なにも大企業に限った話ではありません。あなたの会社にも、もしかしたらいるかもしれません。タイトルにもある通り、

【専門能力は高いのに、コミュニケーション能力が低くて、結果的に仕事がうまく回らない】

という人です。

例えば、プログラマーとして書くコードの品質はピカイチ。事務職としてミスなく完璧に手続きをこなせる。電気工事士として誰よりも綺麗な施工ができる。…このように、専門職としての能力は非常に高い。

それなのに、

  • 大事な報告や相談を一切してこない。
  • 気難しく、こちらが少しでも頼み方を間違えると、へそを曲げてしまう。
  • 既存の仕事のやり方などに対して、文句や批判ばかり口にする。

このように、職務遂行能力以外の部分で扱いにくさがあり、結果としてチーム全体の仕事がスムーズに進まない。上司としても、能力が高いだけに強く叱ることもできず、どう扱ったものかと持て余してしまう…というご相談は、本当によくお受けします。

なぜ「褒める」だけでは逆効果になるのか?

こういう部下への対策として、最近よく言われるのが「十分に褒めて、自己重要感を満たしてあげる」というアプローチです。人は自分を褒めてくれる相手に好意を持ちやすい(返報性の原理)ので、まずはこちらから歩み寄り、要求を聞いてもらいやすい関係を作りましょう、という理屈ですね。

このアプローチ自体は正しいのですが、実は「能力が高いけどコミュ力が低い」というタイプの人を褒める際には、細心の注意が必要です。なぜなら、褒め方を一つ間違えると、関係が改善するどころか、むしろ逆効果になってしまうことがあるからです。

「能力を褒める」が引き起こす、自己肯定感の罠

このタイプの人の多くは、そのコミュニケーション能力の低さの根っこに、深刻な「自己肯定感のなさ」を抱えています。だからこそ、褒めて自己肯定感を高めてあげること自体は有効なのですが、問題は「何を」褒めるかです。

もし、あなたが彼らの「能力」を褒めてしまったら、どうなるでしょうか。

能力を褒められる → 能力が高い自分には価値があると感じる → 能力の高さが、自分の価値の唯一の拠り所になる → ますます能力の高さに固執する

この心理パターンに、一度ハマってしまうと厄介です。

その人にとって「能力が高いこと」が自分の存在意義そのものになってしまうため、自分の能力の低さや、「できない」こと、失敗などを認めるのが、死ぬほど怖くなります。それを認めてしまえば、自分は価値のない人間になってしまう、と無意識に思い込んでいるからです。

その結果、周りからの的確なアドバイスにも耳を貸さなくなり、苦手な仕事への挑戦を避け、ミスを隠すために上司への報告もしなくなる…という、さらなる悪循環に陥ってしまうのです。

【処方箋】能力ではなく「人格」を褒め、心の安全基地を作る

「めんどくさいなぁ…」というのが正直な感想かもしれませんね。ですが、こういう心理状態の人は、程度の差こそあれ、意外と多くいるんです。

では、どうすればいいのか。私が推奨しているアプローチは、「その人の人格や性格を褒める」「その人自身をまるごと肯定する」というものです。

「ありのままの自分」を肯定する言葉がけの具体例

彼らの成果や能力といった「条件」を褒めるのではありません。その人の「あり方」そのものに目を向けて、それを言葉にして伝えてあげるのです。

  • 「君が作る資料はいつも正確で助かるよ。その上で、君の発想そのものが、いつも面白いよね
  • 「難しい仕事だったのに、やり遂げたのはすごいね。何より、最後まで諦めないその前向きな姿勢が素晴らしいと思う

このように、能力や成果ではなく、その人自身の性質そのものを褒め、受け入れる。そうすると、部下は「能力が高くても低くても、自分はここにいていいんだ」という経験をすることができます。

無理に高い能力を誇示しなくても、自分の存在価値が脅かされない。この心理的な安全基地があって初めて、彼らは安心して上司の言葉に耳を傾け、こちらからの指摘や依頼を素直に受け入れられるようになるのです。

まとめ:本当の承認が、優秀な人材を真のリーダーに変える

もちろん、一度や二度褒めたからといって、人がすぐに変わるわけではありません。また、人の内面を褒めるというのは、慣れないうちは少し難しく感じるかもしれません。

ですが、この関わり方を粘り強く続けることで、部下の心の中には、少しずつ本物の「自己肯定感」が育っていきます。優秀な人というのは、えてして周りから悩みなどないように見られがちですが、彼らは彼らで、特有の悩みや問題を抱えているのです。

その心の深層に寄り添うことこそが、単に優秀なだけの個人を、チームに貢献できる真のリーダーへと変えていく、最も確実な道筋なのです。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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