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【人材育成の罠】「社長の劣化コピー」を求めていませんか?部下の個性を活かす方法

この記事のポイント

  • 「いい人材が育たない」という悩みの根源には、社長や上司が「自分と同じようにできる人材」を無意識に求めてしまうことにあります。
  • しかし、社員は社長とは違う人間であり、得意なことも考え方も異なります。大根に「人参になれ」と求めるのは不可能です。
  • 本当の人材育成とは、相手を自分色に染めることではなく、その人の個性や長所を見極め、それが最も輝く場所や役割を与えることです。
  • 社員一人ひとりの個性を活かすことで、結果的に組織全体の生産性は向上し、社長一人では成し得ない大きな成果を生み出します。

「いい人材が育たない…」すべての経営者が抱える共通の悩み

「いい人材が、なかなか育たなくて…」

これは、私が経営者や管理職の方とお話しする中で、本当によく聞く悩みのトップ3に入ります。これについては、これまでも様々な角度からお話してきましたが、人の問題というのは、どこの会社でも尽きないテーマのようですね。

先日、私が所属している中小企業家同友会の例会(勉強会)でも、この話題で白熱した討論になりました。その中で、「コーチングでは、こういう人材育成の問題にどう対処するのですか?」と質問をいただいたので、その時にお答えした内容を、皆さんにも共有しようと思います。

【ご相談の事例】「自分のようにできないと困る」という社長の葛藤

その場で、ある経営者の方が、こんな悩みを打ち明けてくれました。

「うちは小規模で、会社の売上のほとんどを自分一人が稼いでいるような状態です。人を雇って事業を拡大したい気持ちはあるけれど、その新しく入った人材が、自分と同じレベルで仕事ができるようになってくれないと、お客様の信頼を裏切ることになるし、利益も圧迫してしまう。そう考えると、怖くてなかなか雇用に踏みきれないんです」

このお話、痛いほどよく分かりますよね。社員が自分の基準で仕事ができないから、結局、自分が全部面倒を見なければいけなくなる。それでは、人を雇っても自分の負担が増えるだけだ…。こういうジレンマです。

この問題、実は会社の組織構造や利益構造から見直す必要もあるのですが、もう一つ、コーチングの視点から見過ごせない、非常に重要なポイントがあるんです。それは、この社長さんが、「社員が、自分と同じようにできない」ことを前提に悩んでいる、という点です。

なぜ、その願いは「最初から無理な話」なのか?

「部下や社員が、自分と同じようにできるようになってほしい」。この願い、実は最初から「無理な話」をしていることに、まず気づく必要があります。

無理な理由は、大きく2つあります。

理由①:中小企業に、社長より優秀な社員はまず来ない

これはビジネスの現実です。特に小さな会社では、社長がエースで4番バッターになるのが普通です。もし、社長と同じレベルで、同じように仕事ができる優秀な人材がいたとしたら、その人は社員としてあなたの会社にはいません。おそらく、とっくに独立して、あなたの競合他社になっているはずですから(笑)。

理由②:そもそも、人は皆違う。同じようにはなれない

そして、こちらの理由の方が、はるかに重要度が高いです。

そもそも、私たちは一人ひとり、全く違う個性を持った人間です。ガンガン前に出て新規顧客を開拓するのが得意な営業マンもいれば、既存のお客様とじっくり関係を築いて信頼を得るのが得意な営業マンもいます。ノリと勢いで相手の懐に飛び込むのが得意な人もいれば、緻密な戦略を立てて誠実なコミュニケーションを武器にする人もいる。営業一つとっても、その人の個性によって最適なスタイルは千差万別なのです。

大根に「人参になれ」と言っていませんか?個性を活かすことの重要性

ですから、「社長と同じ人材」や「自分と同じやり方ができる部下」を求めること自体が、そもそも無理難題だということです。

これは、畑に植わっている大根に向かって、「君も、あの人参のように鮮やかな赤色になりなさい!もっと甘くなりなさい!」と言っているようなもの。大根は、どう頑張っても人参にはなれません。

人参には人参の良さがあり、大根には大根の美味しさがあります。それなら、大根の個性を無理に変えさせようとするのではなく、「君は、煮込んでおでんにした方が、その持ち味が最大限に活きるよね」と、その個性が輝く方法を考えてあげるのが、賢いリーダーの役割ではないでしょうか。

ガンガン攻め込むタイプの社長が、じっくり関係を築くタイプの社員に対して、「お前は時間がかかりすぎだ!俺のようにガンガン行け!」と自分のやり方を押し付けたとします。その社員は、社長と同じようには決してできません。そして、うまくできない社員を見て、「やっぱりダメだ、人に任せるなんて無理なんだ」と嘆いても、「いやいや、そりゃそうでしょう」という話なわけです。

まとめ:「自分と同じ」を捨てたとき、本当の人材育成が始まる

というわけで、部下や社員が育たない、と悩んだときの、コーチング視点からの一つの答え。それは、

「その部下の個性や長所をしっかりと見極め、それが最大限に発揮できるような環境や役割を与えること」
「上司である自分と、同じやり方、同じ結果を求めないこと」

この2つに尽きます。

…とは言っても、言うは易し、行うは難し。そこがマネジメントの面白さでもあり、難しさでもあるんですけどね(笑)。

あなたの部下という「大根」を、無理やり「人参」にしようとしていませんか?一度、その視点から、ご自身のチームを見つめ直してみてはいかがでしょうか。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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