この記事のポイント
- 心の「もやもや」は、それ自体が曖昧な言葉(メタファー)であり、悩みの正体を掴めていないサインです。
- 解消への第一歩は、「もやもや」を「何かがはっきりしない」など、具体的な言葉に言い換えてみることです。
- 次に「どうなったら理想か?」を問い、「迷いなく進みたい」といった「〇〇したい」という願望の言葉を引き出します。
- その「〇〇したい」という言葉を手がかりに、現状とのギャップを探ることで、あなたが本当に向き合うべき課題が見えてきます。
「なんだか、もやもやする…」その言葉で思考停止していませんか?
「なんだか、もやもやするんです」
コーチングの現場で、本当によく耳にする言葉です。あなたも、原因は分からないけれど、心に霧がかかったような、すっきりしない感覚を抱えたことはありませんか?
この「もやもや」、実は非常に厄介です。なぜなら、「もやもや」という言葉自体がもやもやしていて、悩みの正体を全く特定できていないからです。これでは、解決のしようがありませんよね。
今日は、この掴みどころのない「もやもや」の正体を突き止め、心を晴れやかにするための、具体的なコーチングプロセスをご紹介します。
【コーチング事例】Oさんの「もやもや」を晴らす3つのステップ
先日、私が主催する「コーチのための実践会」に、ゲストとして参加してくれたOさん。彼もまた、この「もやもや」に苦しんでいました。その時のミニセッションの様子を、3つのステップで再現してみましょう。
ステップ①:「もやもや」を具体的な言葉に翻訳する
まず私がやったことは、「もやもや」という言葉(メタファー)の正体を見極めることでした。
私:「Oさん、その『もやもや』を、別の言葉で表現すると、どんな感じですか?」
Oさん:「うーん…そうですね。『なんだかはっきりしない』というか、『何が分からないのかさえ、分からない』という感じです」
素晴らしい。これで、最初の大きな一歩を踏み出せました。「もやもやする」という漠然とした状態から、「何かがはっきりしないことに悩んでいる」という、より具体的な課題が見えてきたのです。「もやもやの解消」は難しくても、「はっきりしないことの明確化」なら、対処できそうな気がしませんか?
ステップ②:「どうなったら理想か?」を問い、進むべき方向を定める
課題の輪郭が見えたところで、次の質問を投げかけます。
私:「なるほど。では、その『はっきりしない』状態が解消された、Oさんにとっての理想的な状態って、どんな状態でしょう?」
この質問をすると、Oさんの言葉に変化が起きました。
Oさん:「そうですね…。さっきまでは、ただ『もやもやを晴らしたい』と思っていました。でも今、理想を考えると、どちらかというと『迷いなく進みたい』という感じですね」
ここでまた、重要なキーワードが出てきました。「迷いなく進みたい」。これは、Oさんが本当に望んでいる心の状態、つまりゴールです。これで、現在地(はっきりしない)と目的地(迷いなく進みたい)が、明確になってきました。
ステップ③:「〇〇したい」を手がかりに、本当の課題を見つけ出す
ここで重要なのは、Oさんが使った「迷いなく進みたい」という言葉です。言葉には、その人の無意識がよく表れます。「〇〇したい」という願望は、「今は、そうなっていない」という現状を示唆しているのです。
私:「『迷いなく進みたい』ということは、裏を返せば、今は迷っている、ということですかね?」
Oさん:「…あ、そうですね。そうだ、まさに迷っています」
私:「何と何で、迷っているんですか?」
Oさん:「今の仕事をこのまま続けていくべきか、それとも、別の分野に挑戦していくべきか、ですかね…。今の仕事は悪くないけど、もう先が見えていて、以前のようなワクワク感がないんです。別の分野は未知数だけど、昔みたいに色々試したりするのは楽しそうな気がして…」
そこまで話したとき、Oさんはハッとしたように、自分の言葉で気づきを得ました。
「あー…そうか。俺、本当は、別の分野に挑戦したかったのか…!」
この瞬間、Oさんの心の中から「もやもや」は完全に消え去りました。迷いはなくなり、本当にやりたいことが明確になったのです。
まとめ:あなたの「答え」は、あなたの言葉の中に眠っている
今回の事例でお分かりいただけたように、私たちの心の中にある漠然とした悩みや不安は、多くの場合、言語化できていないだけなのです。
- 曖昧な言葉を、具体的な言葉に翻訳する。
- 理想の状態を、「〇〇したい」という言葉で表現する。
- その「〇〇したい」を手がかりに、現状とのギャップ(=本当の課題)を探る。
このプロセスを丁寧に踏むことで、自分でも気づかなかった「答え」の手がかりが、自分自身の言葉の中から見つかることがよくあります。
もしあなたが、今「もやもや」を抱えているなら、ぜひ「自分は、本当はどうしたいんだろう?」と、ご自身の心の声に、注意深く耳を傾けてみてください。そこに、あなたの道を照らすヒントが隠されているはずですよ。
この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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