この記事のポイント
- 「やる気がない」ように見える部下は、内面の状態によって大きく3つのタイプに分けられます。
- 最も上司の関与で改善しやすいのは、意欲はあるものの「何かに妨げられている」タイプの部下です。
- やる気を妨げる主な要因は「自信の欠如」「目的の喪失」「上司との人間関係」の3つであることが多いです。
- 部下のタイプとやる気を妨げている原因を見極め、それぞれに合ったアプローチをすることが、本人の力を引き出す鍵となります。
「部下にやる気を引き出したい」その悩み、一言では片付きません
「部下のやる気を引き出したいんです」。これは、私が経営者や管理職の方々から、本当によく受けるご相談の一つです。特に、お酒の席なんかだと定番の話題ですよね(笑)。
ただ、皆さんもご存知の通り、モチベーションというのは人の心の問題。単純に「これさえやれば誰でもやる気MAX!」といった特効薬のようなものは存在しません。だからこそ、多くのリーダーが頭を悩ませるわけです。
今回は、「部下にやる気がない」と感じたとき、その部下の心の内側で一体何が起こっているのか、そして上司としてどう関わればその力を引き出せるのか、そのヒントをお話ししていこうと思います。(もちろん、これは簡易的な見立てです。本当に深く関わる場合は、もっと詳細に話を聴く必要がありますからね)
【タイプ診断】あなたの部下はどれ?「やる気がない」3つの内面
まず、「やる気がない」ように見える部下は、その心の内面の状態によって、ざっくりと3つのタイプに分けることができます。
タイプA:実はやる気がある「静かな闘志」型
内心ではしっかりとやる気を持っているのに、その表現方法が周りに伝わりにくいタイプです。例えば、定時でサッと帰るけれど、就業時間内は誰よりも集中して質の高い仕事をしている、といったケースですね。本人はやる気満々なので、問題は「上司がそのやる気を見抜けていない」という認識のズレにあります。
タイプB:給料のためと割り切る「省エネ」型
仕事そのものへの意欲が低く、「給料をもらうため」と割り切って働いているタイプです。モチベーションの源泉が「怒られないように」「クビにならないように」といった消極的なものなので、必要最低限の仕事しかしない傾向があります。このタイプへのアプローチは、正直なところ難易度が高く、上司の関与だけでは限界がある場合も多いです。
タイプC:本当はやりたい「ブレーキ」型
仕事への意欲も能力もあるのに、何か見えない力に「ブレーキ」をかけられ、やる気を出せずにいるタイプです。体調の問題かもしれませんし、職場の人間関係かもしれません。このタイプこそ、上司の関わり方次第で劇的に改善する可能性を秘めた、最も注目すべき存在です。
最も改善しやすい「ブレーキ型」部下のやる気を妨げる3つの壁
では、タイプCの部下がかかえている「ブレーキ」、つまりやる気を妨げるものの正体は何なのでしょうか。これもいくつかのパターンに分けられますが、特に多いのが次の3つの「壁」です。
壁①:「どうせ自分にはできない」という自信の壁
人は「これならできるかもしれない」と感じることに挑戦意欲が湧きますが、「絶対に無理だ」と思っていることには、そもそもやる気が出ません。過去の失敗体験や自己肯定感の低さから、挑戦する前から諦めてしまっている状態です。
壁②:「この仕事、何のためにやってるの?」という目的の壁
目の前の作業が、自分の将来や会社の未来、お客様の幸せといった、より大きな目的やビジョンに繋がっていると感じられない状態です。「自分は何のためにこんなことをしているんだろう…」という虚しさが、徐々にやる気を蝕んでいきます。
壁③:「この人(上司)のためには頑張れない」という人間関係の壁
少し耳が痛い話かもしれませんが、実はこれが原因であるケースは非常に多いです。上司から頭ごなしに否定された、言うことがコロコロ変わって信頼できない、正当に評価してくれない…。こうした上司への不信感が、仕事への意欲を削いでしまっているのです。
これを読んで、「え、自分のせいだったのかも…」とドキッとした方もいるかもしれません。ですが、誰しも悪気なく相手のやる気を削いでしまうことはあります。深刻に悩みすぎず、「改善のチャンスだ」と前向きに捉えることが大切ですよ。
【処方箋】3つの壁を取り払う、上司の効果的なアプローチ
部下がどの壁にぶつかっているかを見極められれば、取るべきアプローチは明確になります。
1. 「自信の壁」を感じている部下には…
何よりも自信をつけさせてあげることが先決です。いきなり高い目標を与えるのではなく、小さな成功体験を積み重ねさせ、「自分にもできる」という感覚を育ててあげましょう。また、本人が気づいていない長所や頑張りを具体的にフィードバックしてあげることも非常に効果的です。
2. 「目的の壁」を感じている部下には…
仕事の意味や目的を共有してあげましょう。会社のビジョンや、その仕事がお客様にどんな価値を提供しているのかを熱意をもって語る。あるいは、1on1などで部下自身のキャリアプランや将来の夢を聴き、現在の仕事との繋がりを見出してあげるのも素晴らしいアプローチです。
3. 「人間関係の壁」を感じている部下には…
まずは、これまでの自分の関わり方を謙虚に振り返ってみましょう(笑)。その上で、「部下の意見や存在を肯定する」「発言に一貫性を持つ」「結果だけでなくプロセスも承認する」など、部下が安心して仕事に取り組めるような信頼関係を、一つひとつ丁寧に築いていくことが求められます。
まとめ:部下の心を理解することから、強いチームは生まれる
「やる気」という感情は、理屈だけではコントロールできない、非常にデリケートなものです。しかし、それは「その日の気分」のような、まったく掴みどころのないものでもありません。
重要なのは、「やる気がない」という表面的な現象で判断するのではなく、「その心の内側で、今どんなことが起きているのだろう?」と深く理解しようと努めること。そして、もしそこに問題があるのなら、それを取り除くための関わりを粘り強く続けていくことです。
少しお説教っぽくなってしまいましたが、こうした地道な関わりの積み重ねこそが、部下が自ら輝き、生産性の高い、強いチームを創り上げていくのだと、私は確信しています。
この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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