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「髪切った?」の一言がセクハラに?部下との関係を壊さないための本質的対策

この記事のポイント

  • ハラスメント問題の本質は、発言内容「何を言うか」よりも、誰が発信者か「誰が言うか」にあります。
  • 法的な定義や論理的な正しさだけでは、相手の「感情的な不満」は解消されません。
  • 「この人に言われるなら嫌じゃない」と思われるレベルの良好な信頼関係を、普段から築くことが最も重要です。
  • 具体的な信頼構築は、「仕事の承認」「人間性の承認」「上司自身の姿勢」という3つの積み重ねから始まります。

「髪切った?」と褒めただけなのに…ハラスメントに怯える管理職の悩み

最近、マネジメント層の方々から「何でもハラスメントと言われそうで、部下とのコミュニケーションが難しい」という声を聞く機会が本当に増えました。まったく、窮屈な世の中になったものですよね。

ひどいケースだと、髪を切ってきた女性の部下に良かれと思って、
「髪切ったんだ? 似合うね!」
と声をかけたら、

「セクハラです!」
と、真顔で言われてしまった…なんていう、笑えない話もあるそうです。

「髪切った?」がセクハラになるなら、タモリさんだって困ってしまいますよね(笑)

…と、冗談はさておき、私たちはこの「ハラスメント問題」とどう向き合えばいいのでしょうか。部下との円滑なコミュニケーションを諦めるしかないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。実は、この問題の根っこは、多くの方が考えている場所とは少し違うところにあるんです。

ハラスメントの「正論」だけでは解決しない根本的な理由

法的定義を知っても埋まらない「感情」の溝

セクハラやパワハラには、男女雇用機会均等法などで一定の定義やガイドラインが示されています。これを知っておくことは、もちろん大前提として重要です。

しかし、ここで一つ大きな落とし穴があるんですよね。

仮に、「髪切ったの?」という発言が客観的に見てセクハラには該当しないとしましょう。その事実を盾に、上司が「あれはセクハラではない。だから問題ないんだ」と論理的に説明したとします。

さて、言われた部下は、
「そうか!課長はセクハラをしたんじゃなかったんですね。私の勘違いでした、すみません!」
と、心から納得してくれるでしょうか?

…まず、ありえませんよね。

おそらく、「理屈ではそうかもしれないけど…」という、モヤモヤした感情的な不満は残り続けるはずです。この感情の溝を無視しては、根本的な解決には至らないのです。

問題のポイントは「セクハラかどうか」の議論ではない

つまり、多くの上司が陥りがちな間違いは、「その発言がハラスメントに当たるか、当たらないか」という土俵で戦おうとしてしまうことです。

本当の問題は、そこじゃないんです。
なぜ、部下は「セクハラだ」と感じてしまったのか?その発言の、もっと手前にあるものに目を向ける必要があります。

【本質】ハラスメント問題の鍵は「何を言うか」ではなく「誰が言うか」

ここが一番の核心です。
ハラスメントかどうかの分かれ道は、「何を言ったか」よりも「誰がそれを言ったか」で決まることがほとんどなんです。

【ご相談の事例】同じ言葉でも「嬉しい」と「キモい」に分かれる現実

考えてみてほしいのですが、同じ「髪切ったの? 似合うね」という言葉でも、

  • いつも下ネタばかりで、仕事は部下に丸投げ。そんな上司から言われたら…
    「気持ち悪い…これってセクハラじゃん!」と感じるでしょう。
  • いつも部下のことを見てくれていて、努力を正当に評価してくれる。尊敬できる上司から言われたら…
    「あ、気づいてくれたんだ!嬉しいな」と感じる可能性が高いですよね。

身も蓋もない話に聞こえるかもしれませんが、これが人間のリアルな感情というものです。「言われて嬉しい相手」と「言われて不快な相手」が、厳然として存在するわけです。

「それは部下による上司の差別じゃないか!」
「人によって態度を変えるのはおかしい!」

そう反論したくなる気持ちもわかります。ですが、あなただって、普段から真面目に仕事に取り組む部下と、そうでない部下とで、自然と対応が変わることはありませんか?それと同じなんですよね。

結局のところ、問題は言葉そのものではなく、その言葉が発せられるまでの「関係性の土台」にあるのです。

ハラスメントと無縁の「信頼関係」を築くための具体的なステップ

では、どうすれば「この人に言われるなら嫌じゃない」と思われるような、良好な関係を築けるのでしょうか。奇策は必要ありません。当たり前のことを、当たり前に積み重ねていくだけなんです。

ステップ1:仕事の上で、十分に部下を「承認」する

まずは基本中の基本です。部下の仕事ぶりをよく見て、成果が出たときはもちろん、そのプロセスにおける努力や工夫を具体的に言葉にして承認しましょう。「よくやった」だけでなく、「あの難しい交渉、粘り強く頑張ったな」「資料の細かい部分まで配慮が行き届いていて助かったよ」といった、具体的な事実を伝えることが大切です。

ステップ2:仕事以外の部分でも、部下の人間性を「承認」する

仕事の評価だけでなく、「○○さんがいるとチームが明るくなるよ」「いつも会議の準備を率先してやってくれてありがとう」といった、その人の人間性や貢献に対する感謝を伝えましょう。一人の人間として尊重している、というメッセージが相手に伝わります。

ステップ3:上司であるあなた自身が、やるべきことをやる

部下は、上司の背中を本当によく見ています。口ばかりで行動が伴わない上司を、部下は決して信頼しません。難しい仕事から逃げない、部下を守る、自分自身も学び続ける。そういった上司自身の真摯な姿勢が、何よりも雄弁に信頼を語るのです。

まとめ:ハラスメント対策は、最高のチームづくりの第一歩

「髪切った?」の一言でハラスメントだと感じさせないためには、普段から良好な関係を築いておく必要がある、というお話をしてきました。

これは単なるハラスメント対策に留まりません。
信頼関係で結ばれた職場は、心理的安全性が高く、コミュニケーションが活性化します。その結果、離職率の低下や生産性の向上といった、会社経営全体に大きなプラスの効果をもたらしてくれるのです。

日々の小さな承認の積み重ねが、やがては揺るぎない信頼関係という大きな財産になります。ぜひ、今日からできる一歩を始めてみてください。


この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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