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【プロが解説】「答えはあなたの中にある」は本当?コーチングの嘘と真実

この記事のポイント

  • コーチングで多用される「答えは相手の中にある」は、相手が知識や選択肢を知らない場合には当てはまりません。
  • 優れたコーチの役割は、正解を「教える」のではなく、解決策となりうる複数の選択肢(知識・情報)を「提供」することです。
  • 最も重要なのは、提供された材料を元に、本人が「自ら考えて選び、決断する」という自己決定のプロセスです。
  • この「自分で選ぶ」経験こそが、人の当事者意識と責任感を引き出し、真の「自立」と成長を促す鍵となります。

コーチングの常套句「答えはあなたの中にある」への大きな違和感

「答えはあなたの中にある」
「答えは相手の中にある」

コーチングを学んだり、受けたりしたことがある方なら、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。「コーチは答えを教えるのではなく、相手の中から答えを引き出すのが仕事だ」といった文脈で使われる、非常に有名なフレーズです。

ですが、私自身コーチングの研修などをしていると、受講者の方からこんな質問をよく受けるんです。

「『答えは相手の中にある』と言っても、本当に答えがない場合もありますよね?」と。

これ、本当にその通りなんですよね。実を言うと、私自身もこの言葉にはずっと懐疑的で、「いやいや、答えが相手の中にないことなんて、いくらでもあるでしょ」と、ずっと思っていました。

【私のコーチング事例】なぜ「答えを引き出す」だけでは不十分なのか?

以前、生命保険の営業職、いわゆる生保レディの方々を対象にコーチングをしていた時の話です。

彼女たちの多くが、こんな悩みを抱えていました。
会社からは「とにかく保険の提案書をお客様に配りなさい!」と言われる。営業経験なんてないから、言われた通りに必死で提案書を配りまくる。でも、お客様からは「いらないよ」と嫌な顔をされる…。そんな毎日が続き、だんだん営業に行くこと自体が怖くなってしまう。

この状況で、彼女たちに「どうすれば売上が上がるか?」という問いを投げかけ、「答えはあなたの中にある」と信じて答えを引き出そうとしたら、どうなると思いますか?

彼女たちは「提案書を配る」というやり方しか知らないわけですから、出てくる答えは決まって「もっと頑張って、もっとたくさん提案書を配ります!」なんです。当然、それでは状況は好転しませんよね。

私はコーチとして、人の持つ無限の可能性を心から信じています。ですが、それとこれとは話が別で、正直、「知らないものは知らない」んです。知らないことについて、いくら引き出そうとしても、有効な答えが出てくるはずもないのです。

「教える」でも「引き出す」でもない、第3の関わり方

「じゃあ、やっぱり正解を教えてあげるべきなのか?」というと、それもまた違う、と私は考えています。

選択肢(材料)は提供する、でも「正解」は教えない

もちろん、知らない知識はインプットする必要があります。先ほどの例なら、提案書を配りまくる以外の、お客様に喜ばれる営業手法はたくさん存在します。それは知識として、きちんとお伝えすればいい。

ただ、ここで重要なのは、「このやり方が正解だから、この通りにやりなさい」というスタンスを取らないことです。これをやってしまうと、相手は問題を自分ごととして捉えにくくなり、ただの指示待ち人間になってしまいます。他人に言われた通りにやってうまくいかなければ、「あの人のせいで失敗した」と他責になり、学びも成長もありません。

私が最も重要だと考えている関わり方は、こうです。

「知らないことは、知っている人が教える(選択肢を提供する)」
「しかし、それを材料に、どの道を選ぶかは本人が決める」

生保レディさんの例で言うなら、「提案書を配りまくる方法もあるけど、こんな方法もありますよ」と、

  • ひたすら関係構築に徹する方法
  • 専門家として相談されるポジションを築く方法
  • お金に関するセミナー講師になる方法

といった、複数の選択肢を提示します。そして、その中からどれを選び、どう実行していくかは、完全に本人に委ねるのです。

なぜ「自分で選ばせる」ことが人の成長に不可欠なのか?

このアプローチを取ると、相手はものすごく頭を使います。そして、自分の頭で考え、自分で判断し、自分で決めることになります。

もしかしたら、選んだ選択肢が失敗に終わるかもしれません。しかし、それは「他人に言われたからやった」のではなく、「自分で考えて選んだ結果」です。だから、その結果を自分の責任として受け止められるのです。

「自分の責任」と聞くと、冷たく厳しい言葉に聞こえるかもしれませんね。ですが、自分の責任だと思えるからこそ、人は真剣に反省し、深く学ぶことができます。失敗を次への糧として、力強く成長していけるのです。

本当のゴールは「自立」。「自分の足で立てる人」を育てる関わり方

この「自分で選ぶ」プロセスは、本人からすると「厳しい」「しんどい」と感じることもあります。ですが、これこそが「自力で問題解決していく力を身につける」、つまり「自立」へのプロセスに他なりません。

「コーチがいないと何もできない」依存状態の人ではなく、
「コーチという存在を、自分の成長のために最大限活用する」自立した人へ。

これこそが、私が考えるコーチングの本質的な関わり方です。

結論です。
「答えは相手の中にある」のではありません。
「答えの材料は外から与え、最終的な答えは、相手が自分で考えて選ぶ」のです。


可能性は開く、選択は自分で

私はコーチングの時、知っていることはどんどんお伝えします。「それなら〇〇という方法もありますよ」とか「一般的には××の方が成果が出やすいと言われますね」といったように。

ただ、「だから、あなたは〇〇した方がいいですよ」とは絶対に言いません。最後の選択と決断は、必ずご本人にしていただきます。

クライアントさんからは「厳しい」「ドS」「圧を感じる」などと言われることもありますが(笑)、それでも、このプロセスを通じて誰もが大きく成長し、「人生が変わった」と喜んでくださっています。

たった1回のセッションですが、あなたの潜在能力を最大限に引き出すきっかけになります。この機会をぜひ、ご自身の成長のために活用してください。

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この記事を書いた専門家

中城 卓哉(なかしろ たくや)

パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ

「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。

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