「社員が辞めないマネジメント」とか
「社員の離職を防ぐコーチングスキル」とか
そういうのを教えていながら言うのも何ですが、
「社員が辞めない」ということをあまり重視しすぎるのは
逆にマイナスになることがあります。
その理由は大きく2つありまして、
1つは「フォーカス」の問題、
1つは「価値観」の問題です。
●フォーカスは「○○ない」にしない
「社員が辞めない」という目標は
フォーカス（意識の焦点）が「辞める」に向いています。
これは「痛みを避ける行動」といって、
離職という嫌なことを起こさないようにという動機です。
こうなると、社員を見るときも「こいつは辞めるんじゃないか」と
疑いの目で見ることになりますし、
社員に辞められることを恐れるあまり
言うべきことをきちんと言えなくて、生産性が下がることもあります。
そして何より、「辞めない」ことを目指しているので、
不満を潰すことはしますが、それ以上は考えません。
すると、「嫌じゃないけど、満足もしない」という会社になります。
そうではなく、「社員が会社を大好きになる」とか
「社員が毎日楽しく仕事できる」とか
そういうことを目指した方がいいです。
この思考だと、フォーカス（意識の焦点）は
「社員が会社を好きになる」「楽しく仕事できる」なので
ポジティブなところを目指すことになります。
社員から見ても、自分に対して
「辞めないように」と接してくる上司や経営者より
「楽しく仕事できるように」と接してくれる上司の方が
いい印象を持つことができますよね。
なので、「社員が辞めない」を目指すのではなく、
「社員が前向きになる」「社員が楽しく働ける」といった
理想的な状態を目指すようにした方がお勧めです。
●「辞めない」より価値観を大切にする
もう一つの理由は、
「社員が辞めない」ことを重視すると、会社の価値観がブレるから
です。
十人十色という言葉の通り、人の考え方や好き嫌いというのは
人によって大きく違います。
ガッツリ働くのが好きな人もいれば、
最低限しか仕事したくない人もいます。
ガッツリ働きたい人は、仕事がぬるいと辞めてしまいますし、
最低限だけ働きたい人は、仕事量が多いと辞めてしまいます。
社員が辞めないように、と思ってマネジメントしていると、
いろんな社員に気を遣って意志決定しないといけなくなります。
八方美人のせいで優柔不断、みたいになるわけです。
こうなると、会社の方針を決められない。
何を重視してどんな行動を、どのくらいの基準でやるのか、
ということを社員に示せなくなるんです。
それで、どっちつかずのまま経営していると、
「社長が何をしたいのかわからない」と言って辞められたりします。
（そういう例を聞いたこともあります）
そうではなく、会社として重視すべき方針や価値観、
どこに向かって事業を営んでいくかという理念などは
明確に示す必要があるんです。
「我が社は○○に貢献するために、常に自分を向上させるんだ」
のように、会社としてどうしたいかを示すと、
それに合わない人は、すぐに辞めていきます。
ただ、その離職を恐れないことです。
会社の考えに合わない人を雇用し続けることは
会社にとっても社員にとっても、しんどいだけです。
乱暴な話ですが、合わないのなら、逆に早く辞めてもらった方がいい。
そうすると人手が足りなくなる恐れが出てくるんですが、
方針や価値観を明確に示していると、
その価値観に合った社員が入ってきてくれるんです。
私の友人の会社も、理念や方針を明確にして示し、
それを社員に伝えたところ、
「そんな社長にはついて行けない」と
ごっそり社員が辞めたんだそうです。
だけど、社長の方針に共感した社員は残ってくれた。
その社員たちが頑張って、一生懸命働いてくれているんだそうです。
さらに、方針に合う社員さんが入ってきて、
自主的に会社を運営してくれているので、
社長が現場に張り付いていなくても良くなったとのことでした。
もちろん、社員の離職は経営的にもダメージが大きいですし、
会社が不満だから辞めてしまうというのは
可能な限り防いだ方がいいです。
ただ、「辞めない」ことは最優先事項ではなく、
その先にある
「社員の前向きな気持ち」「社員のスキルアップ」や
「会社のチームづくり」「より高い理想の実現」
といったことを重視していく。
そういう意識を持つことで、
より強いリーダーシップを発揮できる
そう考えて、普段のコーチングを行っています。
社員さんに接する際の参考にしていただければ幸いです。
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