この記事のポイント
- 「自信がない」という悩みには、原因が全く異なる2つのタイプがあり、それぞれ対処法が異なります。
- タイプ①【能力不足型】:「自分にはできない」という思い込みが原因。小さな成功体験を積むことが有効です。
- タイプ②【自己価値不足型】:「できるはずなのに動けない」という状態。根本原因は『自分には価値がない』という思い込みにあります。
- 特にタイプ②の人は、能力を高めても自信はつきません。「無条件の自己肯定」を手に入れることが、本当の自信を取り戻す鍵となります。
あなたの「自信がない」はどのタイプ?努力が逆効果になることも…
「自分に、自信がないんです…」
私がプロのコーチとして15年以上活動する中で、この言葉を何度聞いてきたか分かりません。経営者の方でも、優秀な管理職の方でも、多くの人がこの「自信のなさ」という見えない壁に悩まされています。
そして、数多くのクライアントさんと向き合う中で、この「自信がない」という状態には、大きく分けて2つの種類があることが分かってきました。この2つは原因が全く異なるため、もしAタイプの対処法をBタイプの人に使ってしまうと、努力が空回りするばかりか、かえって自信を失わせてしまうという、悲しい結果を招きかねません。
今回は、この2種類の「自信がない」について、その見分け方と、それぞれに本当に有効な対処法を解説します。ご自身のメンタル改善はもちろん、部下や後輩のマネジメントにも、ぜひ役立ててみてください。
2種類の「自信のなさ」を徹底解説
タイプ①:「自分にはできない」と思い込む【能力不足型】
これは、最も一般的に知られている「自信がない」の状態です。その根底には、自分自身の「能力の低さ」へのフォーカスがあります。
- 「自分は能力がないから、どうせうまくいかない」
- 「やっても失敗するに決まっている」
- 「だから、怖くて挑戦できない」
このように、自分への評価がとても低く、純粋に「自分にはできない」と思い込んでいるパターンです。
【能力不足型への処方箋】小さな「できた!」を積み重ねる
このタイプの場合、自信を持つためには「自分にもできる」という具体的な実感や体験が何よりも有効です。つまり、小さな成功体験をコツコツと積み重ね、「できた!」という実感を一つひとつ味わっていくこと。
人気マンガ『ドラゴン桜』にも、落ちこぼれの高校生にあえて小学生レベルの問題を解かせて満点を取らせ、「ほら、できるじゃないか!」と褒めて自信をつけさせる、という象徴的なシーンがありましたよね。あの通り、「できた」という客観的な事実は、「自分はできる人間なんだ」という自信の土台を、着実に築いてくれるのです。
タイプ②:「できるはずなのに、動けない」【自己価値不足型】
一方、こちらのタイプはあまり語られることがありませんが、実はかなり多く、特に優秀で真面目な人、高学歴な人に多いと感じます。
このタイプの人たちは、客観的に見て能力は高く、自分でもそれを自覚しています。「やればできるはずだ」と頭では分かっている。それなのに、なぜか最初の一歩が踏み出せない。挑戦することに、強い恐怖を感じてしまうのです。
世の中の多くの自己啓発書では、「自信をつけるには、できないことをできるようにしよう」と説かれています。そのため、このタイプの人たちも、さらに能力を高めようと必死に勉強したり、実績を積み上げようとしたりします。しかし、もともと「できる」人たちなので、それ以上「できる」を上乗せしても、一向に自信はつかないのです。
なぜなら、このタイプの「自信のなさ」の根本原因は、「できる・できない」という能力の問題ではなく、もっと深いところにある『私には、存在する価値がない』という、自己承認の不足にあるからです。
優秀なのに自信がない【自己価値不足型】への処方箋
このタイプの人は、「自分には価値がない」という無意識の思い込みを抱えています。そして、その「無価値感」から逃れるために、「能力」や「実績」を手に入れようとします。「これだけの実績がある私には、価値があるはずだ」と、能力を自分の価値の証明書にしようとするのです。
しかし、これは非常に危険な状態です。なぜなら、「能力があるから価値がある」というロジックは、裏を返せば「能力がなければ価値がない」という恐怖と常に隣り合わせだからです。自分より優秀な人に出会うたびに、自分の価値が揺らぎ、嫉妬や劣等感に苛まれる…。本人はなぜこんなに生きづらいのか分からず、とても苦しい思いをします。
では、どうすればいいのか。その答えは、【無条件の自己肯定】を手に入れることです。「何があってもなくても、自分は素晴らしい」と、心の底から思えるようになること。そのための具体的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:自分の「価値のルール」を明確化する
まず、「私は、どんな条件が満たされたら、自分に価値があると思えるのか?」という、自分だけの“思い込みのルール”を特定します。「私は優秀だから価値がある」「私はお金持ちだから価値がある」など、あなたが無意識に設定している、自分を肯定するための条件を言語化してみましょう。
ステップ2:その古いルールを壊す(初期化する)
その思い込みのルールは、いわば脳にインストールされた、バグのあるアプリの設定のようなものです。この設定がおかしいから、「能力はあるのになぜか動けない」という不具合が起きているのです。ですから、まずはこの設定を初期化、つまり一度消去して、まっさらな状態に戻す必要があります。(「そんなことできるの?」と思うかもしれませんが、私たちプロのコーチは、実際にこれを安全に行う専門的な技術を持っています)
ステップ3:「無条件の価値」という新しいルールを作る
アプリを初期化したら、次は正しい設定をインストールしますよね。それと同じように、脳にも新しい、あなたを幸せにするルールを設定してあげます。例えば、
「私は、生まれながらにして価値がある」
「私は、優秀であってもなくても、その存在自体に価値がある」
といった、何の条件も必要としない、新しい自己肯定のルールをインストールするのです。世界的なコーチ、ピーター・セージは、これを「何をしていてもいなくても、何ができてもできなくても、私は価値があり、愛される」と表現しています。あなたにしっくりくる、最強の言葉を見つけていきましょう。
本当の自信とは、何があっても揺るがない「心の土台」
このようにして、「私は無条件に価値がある」と心の底から思えるようになると、人は能力や実績に固執する必要がなくなります。失敗しても、誰かに悪く言われても、「私自身の価値は、びくともしない」という絶対的な安心感がある。これこそが、何にも揺るがされない「本当の自信」なのです。
私たちプロコーチは、「能力はあるのに自信が持てない」という、一見矛盾した悩みの奥にある、この深い心のメカニズムにアプローチしているのです。
【事例】無意識の「自信のなさ」を解消したら、禁酒できたOさん
「今はお酒は嫌いになっていて、飲まないといけない雰囲気の際に少し飲むくらいです」
毎晩、意識を失うほど飲まないと眠れなかった経営者のOさん。「社員が言うことを聞かないストレスで、飲まないとあれこれ考えてしまって眠れないんです」と、どうしてもお酒がやめられずに悩んでいました。そんなOさんが、きっぱりと「お酒を飲みたいと思わなくなった」理由もまた、この「無意識の自信のなさ(自己価値不足)」を解消したことでした。
意志の力ではどうにもならない根深い問題も、その根本原因にアプローチすることで、あっけなく変化することがあります。
この記事を書いた専門家
中城 卓哉(なかしろ たくや)
パワーコーチ株式会社 代表取締役
経営者・管理職専門のビジネスコーチ
「私たちは夢を叶える会社です」を経営理念に、経営者や管理職が抱える「人の問題」に特化したコーチングを提供。科学的な理論と豊富な現場経験に基づき、幹部育成、チームビルディング、組織のビジョン設定などをサポート。クライアントが本来持つ能力を最大限に引き出し、ビジョンの実現に貢献することをミッションとする。「在り方」と「やり方」の両立を重視し、小手先のテクニックではない、本質的なリーダーシップ開発に定評がある。
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